「小さいうちからこういう子が地域にいることを知ってほしい」――障がいのある子も安心して遊べる「インクルーシブ公園」の意義と、保護者の思い #こどもをまもる
社会の注目が集まり、問い合わせが急増
こうした障がいのある/なしにかかわらず児童が一緒に遊べる公園をインクルーシブ公園といい、障がいのある子どもでも安心して遊べる遊具をインクルーシブ遊具という。「インクルーシブ(inclusive)」とは、「包括した、全てを含んだ」という意味だ。 「公園にインクルーシブな遊具を置くようになったのは、1990年にできたアメリカの障がい者差別禁止法(障がいのあるアメリカ人法、ADA)が一つのきっかけです。そこでは障がいを持つ子どもも公園で遊ぶ権利があるという考えから、アクセシブルでない公園の新設などは同法に反すると規定されました」 と、インクルーシブ公園の情報発信をしている市民団体「みーんなの公園プロジェクト」代表の柳田宏治さん(倉敷芸術科学大学教授)は説明する。その後、多様な子どもに遊びを保障するインクルーシブ公園は、欧州やオセアニア、香港などにも広がっていく。
事務局の矢藤洋子さんはこう言う。 「日本でもそのような公園は90年代くらいからつくられていたんですが、単発の取り組みに終わっていました。本格的に社会が注目しだしたのは、2020年に砧公園(東京都世田谷区)に『みんなのひろば』がつくられてからです」 「みーんなの公園プロジェクト」には、現在、インクルーシブ公園づくりに興味を持つ自治体、公園建設コンサルタント、障がい児の保護者などの市民から問い合わせが相次いでいるという。 「ここ数年で問い合わせは10倍くらいに増えた感じ。一種のムーブメントが起きています」(柳田さん)
「河川敷の土手」から発想した遊具
そのムーブメントの牽引役ともなっているのが、遊具を開発する会社だ。株式会社コトブキ(本社・東京都港区)はオープンスペースのベンチなどのストリートファニチャーや公園遊具の大手メーカーである。 17年に同社の深澤幸郎社長らがアメリカのポートランドを視察し、インクルーシブに整備された公園に触発を受けた。翌年に日本公園施設業協会でシンガポールを視察して、業界全体の取り組みが始まった。同社はこれまで体を固定する器具がついたブランコなど、いくつものインクルーシブな遊具を開発して販売している。同社で遊具のデザインを担当しているスタジオ本部チームリーダーの北村美佳さんは、インクルーシブな公園の意義についてこう考えている。