新しい美食の潮流、デスティネーションレストランの未来を担う若き実力派シェフの世界観に迫る
本田:最初、群馬にどんな食材があるのかというところから始まるわけじゃない。今なら、デスティネーションレストランが増えてきて、地方の食材も注目されて、レベルの高いものも出てきている。けれど、当時は、そこまでにはなっていない。開拓するのも大変だったでしょう?
片山:最初はそうでしたね。使いたい食材の生産者とせっかく出会っても、その後、続かなくて、また探す。そんなことがよくありました。料理や食材の質を一緒にレベルアップしようとか、そういうモチベーションのある方、熱意がある方とは未だに関係が続いています。東京に卸すよりは「白井屋」や片山さんに一番いいものをと言ってくださる人もいて、ありがたいですよね。それはこれまで積み重ねてきたものがあるからだと思います。 本田:互いにレベルアップしてきたというのもあるよね。デスティネーションレストランでよくあるのが、ハワイなんかそうだったんだけど、なかなかいい食材が地元だけでは手に入らないということ。90年代ぐらいに、ハワイのシェフたちが、ハワイのレベルを上げようと、農家や生産者と組んで、こういう野菜が必要だとか、鶏や牛、豚とかもこのぐらいのレベルのものが必要だとか、だから、一緒に努力しようとなった。そうすると、両者のやり取りがあって、どんどんレベルが上がっていく。生産者だけだと、レストランではこういうものが必要だとか、このレベルのものが欲しいとかがわからない。 片山:おっしゃる通りだと思います。シェフと生産者、お互いの気づきでより良いものができる。例えば、冬場のちぢみほうれん草。根っこもおいしいのに、農家さん、根っこは売り物にならないと言う。私たちのレストランは根っこ付きでいいんですよと言うと、驚かれますね。シェフの常識、農家さんの常識、双方の思いがわかると、いろんな発見があります。
本田:ひろみたいなシェフがいると、地元食材のレベルも上がる。これから、群馬にも新しいデスティネーションレストランが増えるかもしれない。今、群馬、いろいろ回っていて、「別邸 仙寿庵」オーナーの久保くんと一緒に群馬を盛り上げなきゃと言っています。