<高校野球>健大高崎は“暗黙のルール” を破ったのか
■日本プロ野球界でも過去の問題視される 2010年のオリックスー阪神の交流戦では、阪神の俊介が5点リードの7回に盗塁を仕掛けて、試合後、当時オリックスの監督だった岡田彰布氏が、「大変なことをしたな」と激怒し騒動となった。ことの顛末を後日、岡田氏に聞いたことがあるが、「こっちが(盗塁を)警戒もしてないとこに完全な侮蔑行為。(ルールを)知らなかったではすまない。やったらあかんことよ」という話をしていた。 健大高崎は8-0で迎えた9回二死から脇本がセンター前で出塁すると、迷うことなく二盗を決めた。続く4番打者にスリーベースタイムリーヒットが飛び出して9点目を刻むことになるが、暗黙のルールに照らせば、この脇本の盗塁は“アウト”である。 ■セーフティリードのない高校野球 だが、これらの暗黙のルールは、あくまでもプロの世界の話。1回戦の藤代(茨城)×大垣日大(岐阜)戦では、藤代は初回に8点を奪いながらもゲームをひっくり返され10-12で敗れた。石川県予選の決勝では、星稜が小松大谷を9回に8点差を逆転して甲子園切符をつかんだ。高校野球において『終盤5点差以上』というセーフティリードは、あるようでないのが現実でそもそも、そういう『暗黙のルール』を高校野球にあてはめることが間違っている。例えルールに違反していなくとも、スポーツマンシップの精神を忘れてはならないが、勝利のために懸命になる姿勢を誰も批判はできないだろう。 実際、「日本一の意識を持って取り組んでいる」(青柳監督)という健大高崎の走塁は、ホームランに匹敵するような武器である。2010年の夏群馬予選準決勝で、前橋工業に0-1で敗れた試合を契機に走塁というものに着眼することになったのが「機動破壊」のスタートだという。専門の走塁スタッフまで置き、練習でも、常に走者を置いて次の塁を狙う意識を徹底して、盗塁に関しては、映像を研究して相手投手の牽制やクイックの癖や、そのタイムまで計測して細かいデータを集め、それをチーム全員に共有して盗塁の成功の確率を高めている。