J2客入れ再開も問題露呈…ファジアーノ岡山の主催試合は制限定員に1000人以上満たず県外来場自粛のはずの北九州サポも
前出の「新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」では万が一、来場者のなかから新型コロナウイルス感染者が出た場合に対応するために、チケット購入者の個人情報を把握することが求められている。ゆえに購入者にとっては手続きが煩雑に感じられやすいオンライン販売に限定したところへ、ただでさえ客足が鈍る平日のナイトゲーム開催、そして雨という気象条件が加わった。 実際、待ちわびてきた入場解禁を週末に控えた7日に開催されたJリーグの合同実行委員会では、前売り段階で上限に達したのは、56を数えるJクラブのなかで川崎フロンターレだけという報告が届いていた。雨のなかを来場した2294人へ心から感謝しながら、北川社長はこんな言葉を紡いでいる。 「正直に言えば、もう少し売れ行きがあったら、と思いました。他のクラブとも連絡を取りましたが、想定よりもだいぶ(チケットの売れ行きが)下回っていると聞いています。この点に関してはどのようなことが原因だったのかを、しっかりと突き止めていきたいと考えています」 試合は両チームともに無得点で迎えた後半16分に、MF高橋大悟のゴールでギラヴァンツが先制。2分後にはFW佐藤亮も2試合連続のゴールで共演し、相手を零封して4シーズンぶりに挑むJ2で成績を2勝2敗の五分に戻した。小林伸二監督は試合後のオンライン会見で、こんな言葉を残している。 「横断幕が上がっている、ということは、おそらく来ていらっしゃるのかな、と」 これまでに大分トリニータ、モンテディオ山形、徳島ヴォルティス、清水エスパルスをJ1へ、そしてギラヴァンツをJ2へ昇格させた請負人が言及したのは、自軍のファン・サポーターだった。
Jリーグは「超厳戒態勢時」が継続される今月いっぱいは、各スタジアムのビジター応援席を閉鎖。その上でアウェイ側のファン・サポーターへ、敵地への来場自粛を呼びかけている。都道府県をまたいでの移動になりやすい点を考慮した上でのお願いだったが、ギラヴァンツを応援する一部のファン・サポーターは我慢できず、普段着で来場したようだ。北川社長も思わず苦笑いを浮かべた。 「プロトコル上では、県外の方の来場を規制するまでには至っておりません。アウェイチームのユニフォームを着て入場することだけは禁止としている状況で、なかなかそこまでを把握して、その上で私たちが(アウェイクラブのファン・サポーターを)止めることは難しいと考えています」 対するファジアーノの有馬賢二監督は、試合前のミーティングで選手たちを「僕たちは再開後で初めてお客さんと、サポーターの方々と一緒に戦えるチームだ」と鼓舞して送り出した。 結果こそ今シーズン初の黒星を喫してしまったが、リモート応援システムを介した歓声にまじって、スタンドから拍手が聞こえてくるたびに万感の思いが胸中に込みあげてきたと明かす。 「一緒に戦ってくれる仲間がいる、と感じていました。逆にファン・サポーターの方々は少し我慢をしながらの応援だったと思いますけど、それでも精いっぱい応援してくれたことは本当に心強かったし、あらためて次、一緒に喜び合いたいという気持ちになりました」 来場時にはマスク着用と検温、そしてアルコールによる手指の消毒が義務づけられている。アルコール類は販売されず、観戦中に座席を移動することも原則禁止。応援や指笛、手拍子、タオルマフラーや旗を振る行為、メガホンの使用、太鼓などの鳴り物の使用、ハイタッチや肩組みがすべて禁止され、約30人のファジアーノ職員が見回りのために手分けしてスタンドを回った。 シティライトスタジアムでファン・サポーターが直面した、中断前とは異なる観戦および応援スタイルが有馬監督の言う「我慢」になる。アウェイクラブのファン・サポーターが敵地での応援を自重することも「我慢」のなかに加えながら、11日からはJ1も「超厳戒態勢時」へと移行していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)