J1再開!なぜ名古屋グランパスは新型コロナ禍を乗り越えてJ1通算400勝を果たすことができたのか?
先発メンバーの顔ぶれにまず驚かされた。リザーブ陣を見てさらに驚かされた。6月に入ってFW金崎夢生、GKミッチェル・ランゲラックが新型コロナウイルスに感染して相次いで離脱。チームも一時的に活動休止を余儀なくされた名古屋グランパスが、コロナ禍を乗り越えた2人を加えた陣容で執念の逆転を成し遂げ、再開初戦で史上5チーム目となるJ1通算400勝を達成した。 清水エスパルスのホーム、IAIスタジアム日本平に乗り込んだ4日の明治安田生命J1リーグの再開初戦。驚かされた理由はランゲラックを先発に指名し、金崎を後半17分からピッチへ送り出したマッシモ・フィッカデンティ監督の選手起用にあった。2人はともに6月15日に退院。ランゲラックは22日に全体練習へ復帰したものの、金崎は直前の30日から合流したばかりだった。 再開初戦を2日後に控えた段階で、フィッカデンティ監督は「近いうちに他の選手たちと同じ位置づけで、彼らのことを考えていけるんじゃないか」と、ランゲラックと金崎の起用には慎重な姿勢を見せていた。しかし、実際は違っていたとエスパルス戦後のオンライン会見で明かしている。 「チームにとって欠かせない選手たちなので、試合に出られる状態ならば、キーパーのランゲラックには最初からしっかりいってくれと、金崎には何分でもいいのでプレーしてくれとそれぞれ伝えた。ともに素晴らしい選手であり、なおかつ準備ができていたので起用した、ということです」 金崎の新型コロナウイルス感染が判明したのは6月2日だった。グランパスは保健所に協力して金崎の濃厚接触者を特定するとともに、前日1日から全体練習に移行していたトップチームの活動を停止。他の選手たちやコーチスタッフは、12日まで再び自宅待機を強いられることになった。
金崎の濃厚接触者と特定された19人は、PCR検査で陰性が確認された。同時に濃厚接触者以外でも希望を募り、実施されたPCR検査で6日にランゲラックから陽性反応が出た。ただ、無症状だったことと濃厚接触者がゼロだったため、活動休止期間を延長する措置は取られなかった。 それぞれの自宅でオンライントレーニングを実施したとはいえ、再開へ向けて各クラブが調整ペースを上げていたなかで、予期せぬ形で強いられた11日間の空白期間がハンディにならないと言えば嘘になる。全体練習を再開させた13日以降の日々を、フィッカデンティ監督もこう振り返った。 「今日はどのようなプレーができるのか、といったところから逆算して(練習のメニューを)考えていく点で非常に難しい部分があった。それでも、選手たちとともに声をかけ合いながら、何よりもまず選手たちの安全を第一に考える、ということを絶対的なものとして取り組んできた」 焦ってペースを上げては故障を招く、負の連鎖を生じさせる事態だけは避けなければいけない。再開初戦までの時間も限られていたなかで、来日した2018シーズンから絶対的な存在としてゴールマウスを守ってきたランゲラックが、再開まで2週間を切った段階で全体練習に合流した。 「トレーニングができない期間もあったけど、家族やクラブの支えもあって練習場に戻ってくることができた。そして、トレーニングのなかでしっかりプレーができる、という感触もあったので」