四球攻めとの知られざる苦闘…なぜ大谷翔平は本塁打王を獲得できなかったのか
8月上旬、大谷は相手の攻めに関して、「特に浅いカウントとかは、ボールでもいいぐらいの感じでカウントを取りに来る場面が多い」と話し、その攻めに対しては、「無理にそこに手を出す必要はない」と対応を口にした。 しかし、あまりにもそうした打席が続き、もどかしさが募る。「我慢の打席が多くなる」と自分に言い聞かせるように口にしたこともあるが、さすがに我慢できなくなり、9月に入って大谷は「強引になっている」と自分に苛立った。 大谷は、打球に角度をつけるには、「メカニック的に(スイングが)長いいい軌道に乗っていれば、いい弾道で上がる可能性が高い」と話す。 「(ボールの)下を叩ける位置を長くバットが通っていれば、いい打球を広角に打てる」 斜め上から来るボールに対し、斜め下からバットを出し、それぞれの軌道で平行線を描くイメージ。しかし、ゾーンを外れるボールを追いかけるうちにその線がぶれた。 伴って前半は使えていた下半身も使えなくなった。 「しっかり(左足に体重が)乗ってないと、飛距離を出しに行くときに、上半身のローテーションで飛ばしたくなる傾向があるので、どうしても率につながらない」と大谷。 「しっかり下(半身)で回れているときは、上がフリーな状態になるスペースも大きいので、その分、率が残る可能性が高い」。 そのことは、如実に数字に反映された。前半の打率は.279だったが、後半は.229だった。 「獲りたいなという気持ちはあるっちゃある」 しっかり意識して狙いに行った本塁打タイトル。惜しくも逃したが、「貴重な経験をさせてもらった」と前向きだ。 「そういうふうに色んな選手から刺激をもらって1年間、いいシーズンを過ごせたっていうのは選手としていい経験」
失敗も財産。そもそも今年は、昨年、投打ともに苦しんだことが土台にある。これだけのシーズンを送って、まだ、伸びしろを感じさせることも驚きだが、マドン監督は最終戦が終わって、大谷についてこう締めくくった。 「今年のショーヘイと同じようなことが出来る選手がいるとしたら、ショーヘイしかいないだろう」 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)