四球攻めとの知られざる苦闘…なぜ大谷翔平は本塁打王を獲得できなかったのか
ただ、大谷に当たりが止まったことも否定できない。 度々指摘されるように、特に9月に入って相手がなかなか勝負してくれなくなったことはその一因。マドン監督も先日、「後半はやはり、みんな、ショーヘイとの勝負を避けた」と改めて指摘。大谷は9月22日からの4試合で13回も歩かされたが、これは1930年のベーブ・ルースらと並ぶメジャー最多タイ。うち4回は敬遠だった。 日程も不運だった。9月はアストロズ、アスレチックス、マリナーズなどプレーオフ進出を争っているチームと17試合。一方、ペレスはタイガース、インディアンスなど、プレーオフ争いから脱落したチームとの試合が19試合もあった。 マドン監督は、「サポーティングキャストが前半とは異なった」とも語ったが、そこもライバルとは差があった。 例えばゲレーロは、45本塁打のマーカス・セミエン、打率.298、29本塁打、102打点のボー・ビシェット、32本塁打、116打点のテオスカー・ヘルナンデスらが脇を固めた。相手にしてみればゲレーロだけを警戒するわけにはいかず歩かせれば、さらに傷口が大きくなるので、勝負せざるをえなかった。 一方のエンゼルスはといえば、9月24日のマリナーズ戦が象徴的だった。その日、4四球の大谷は、1点差の九回、1死走者なしで打席に入ると敬遠されている。相手にとっては同点のランナーであり、セオリーに反する。マリナーズのスコット・サービス監督も、「常識的な作戦ではない」と試合後に認めたが、同点本塁打を打たれるリスクと、敬遠した大谷が同点のホームを踏むリスクを考えたとき、後者の方が低いと判断。その後、1死満塁となったが、エンゼルスは決定打を欠き、マリナーズが逃げ切った。 そんなことが繰り返されるなか、マドン監督が呆れながら「ショーヘイは無人島に一人でいるようなもの」と形容したのは、言い得て妙。脱出するとしても、大谷に頼る人はいない。ゲレーロには何人もの仲間がいる。 もちろん、それだけですべてを説明は出来ない。様々な要因が絡み合う中、歩かせてもいいと際どいところを攻め続けられた大谷が、しびれを切らしてボール球を追いかけ、やがてリズムを崩したことは、本人も認めるところ。