海外を沸かせる日本関連の映像作品:第2の『SHOGUN 将軍』は生まれるか?
『SHOGUN 将軍』も同様で、ハリウッドが突然にして1980年にヒットしたドラマをリメイクしようと思いついたわけではない。75年に出版されたジェームズ・クラベルの原作小説『将軍』を再映像化する話は、ずっと昔からあったものなのだ。複数のクリエイターが製作を試み、2017年には撮影開始直前までこぎつけながら振り出しに戻った。映画やドラマの製作スタジオが以前にも増してIP(知的財産)を重視する今の時代、『将軍』というIPを台無しにしてはならないと、FXのトップは時間を惜しまず慎重に事を進めたのである(ちなみに、ディズニーがFX親会社だった21世紀フォックスを買収すると発表したのは17年末、買収が成立したのは19年なので、ここまでの過程にディズニーは関わっていない)。 そして18年に『トップガン:マーヴェリック』の原案などで知られるジャスティン・マークスが、『SHOGUN 将軍』のショーランナー(製作現場責任者)に選ばれると、彼は主演俳優に決まっていた真田広之にプロデューサーも兼任してくれないかとオファーした。そうやって新たなスタートを切ったこのドラマは、撮影に時間をかけた上、編集などのポストプロダクション作業にも2年を費やしている。 つまり、『ゴジラ-1.0』『君たちはどう生きるか』『SHOGUN 将軍』が同じタイミングで世に出て成功を収めたのは、あくまで偶然なのである。
知日派外国人の小説に映像クリエイターが共感
だが、それ以外の作品を見てみると、日本文化への興味が高まっているのかという問いへの答えは「イエス」に近い。 例えば、2024年7月にApple TV+で配信が始まった『サニー』。レビューサイト「ロッテントマト」で90%の肯定的スコアを獲得するなど高評価を受けたこのシリーズには、ラシダ・ジョーンズ、西島秀俊、ジュディ・オング、國村隼らが出演。クリエイターは米国人脚本家ケイティ・ロビンス、原作は日本在住のアイルランド人作家コリン・オサリバンが18年に出版した小説だ。 舞台が日本の話でも実際には別の場所でロケを行うことが多いものだが(『SHOGUN 将軍』はカナダ、マーティン・スコセッシの『沈黙―サイレンス―』は台湾で撮影された)、もともと日本が好きだったロビンスは『サニー』を絶対に日本で撮影したいと願い、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)中で観光客がいなかったことが逆に幸いして、京都のど真ん中でもロケを決行した。西島秀俊は、長いキャリアの中でも京都の街中での撮影は初めてだったと語っている。