コロナ禍で再燃「家事・育児分担論争」 夫婦間の不公平感や感情のすれ違い、解消の糸口は?
家事の公平な配分というと、数を半分ずつ分けることだと考えがちだ。しかし、五十嵐さんたちが不満解消のカギとして挙げたのは「負担感」。受け持つ家事の数だけでなく、その家事に対する好き嫌いやかかる時間を考慮し、精神的な負担を減らしていこうという提案だった。 アプリの試作版では、夫婦それぞれが、好きな家事・嫌いな家事や、その家事に要する時間を入力。すると、夫婦それぞれが現在担当している家事とその負担感が円グラフで可視化される。最終的に、夫婦どちらの負担感も減らせるように分担の見直しをアプリ上で提案するところまでを目指すという。
「夫婦の感情のすれ違い」解消へゲームの要素を取り入れる試みも生まれた。1980年代に登場した、爆弾がある場所を避けながらマス目を開けていくゲーム「マインスイーパー」をイメージしたアプリだ。その名も「ママ マインスイーパー」で、ネット漫画家・白目さんのイラストを活用した。まず妻が、画面上のイラストの吹き出しに、夫には普段面と向かって言いづらい不満や愚痴などを“怒りポイント”として書き込む。そのイラストをマスの中にしのばせておくことで、面と向かってではなく、ワンクッション置いて本音を伝えようというアイデアだ。不満は面と向かって伝え合うとケンカになりがちだが、それを避ける狙いがある。
今回のアプリ開発は、こうした夫婦間の課題の解決への糸口になる視点やアイデアを提示している。しかし開発者たちは、アプリは問題を解決するものではなく、あくまで“ツール”だと口をそろえる。 自身は子育て中ではないが、同世代の友人からよく悩みを耳にするという五十嵐さん。「アプリを冷静な話し合いのきっかけにして、より公平な分担とは何かを夫婦で考えてもらえれば」と語る。
“家事分担論争”は時代の進歩? 夫婦間の「足りない」モノとは
子どもの発達心理学が専門で、半世紀近くにわたって子育て中の夫婦の悩みに耳を傾けてきた、恵泉女学園大学の大日向雅美学長。家事育児分担に夫婦間で論争が生じていること自体は、意外にも“よい傾向”なのだという。