コロナ禍で再燃「家事・育児分担論争」 夫婦間の不公平感や感情のすれ違い、解消の糸口は?
犬犬さんは夫婦で協力して育児に取り組み、妻が育児休業を取得していた今年3月までは比較的ほのぼのとした内容の漫画を描いていた。しかし、4月に妻が復職して息子が保育園に入ると、状況は一変。息子の発熱には有休や在宅勤務で対応し、隙をみて仕事を進めようとしたものの、なかなか思い通りに進まない。次第に看病や通院で仕事が滞り、叫び出してしまいそうな状況に追い込まれた。 「うちは共働きだから僕も育児をしないわけにはいかないんですけど、ちょっと仕事のほうが破綻しかけていますね。進まないです、仕事が……」
私たちが朝から密着した4月22日、会社に出勤した犬犬さんが帰宅したのは、夜8時半。妻と息子はすでに眠りについていた。犬犬さんは一人寂しく味噌汁をすすりながら、妻とのコミュニケーション不足からくる感情のすれ違いに頭を悩ませていた。 「顔を合わせる時間が減り、衝動的に俺ばっかり大変だなと思う瞬間がある一方で、妻も言わないだけで言いたいことは結構あると思うんですよね。ため込んだ不満があふれたらもう元に戻らないという話も聞くので避けたいけれど、どうしたらいいのかわからない」
それぞれの家事の負担感を可視化 アプリが解決への糸口に?
夫婦間の家事育児分担論争を引き起こす原因になっている不公平感や感情のすれ違い。私たちは、市民有志がデジタルの力で社会課題の解決に挑むシビックテック(Civic tech)に取り組む「コード・フォー・ジャパン」に協力を依頼したところ、課題ごとのチームに分かれて解決につながるアプリを考案しようというアイデアが出てきた。 まずは「家事育児分担の不公平感」を解消するアプリ。議論をリードしたのは、世界的な課題解決に挑む日本の若手15人にも選ばれた気鋭の研究者・五十嵐歩美さん(32)だ。五十嵐さんは国立情報学研究所の助教で、「公平な配分とは何か」を数学的に研究してきた。家事育児という複雑な意思決定に自分の研究を役立てたいと参加したという。