逆転TKO勝利で「世界挑戦したい」と宣言した21歳WBOアジア王者…その名は森武蔵…井岡&サラスの英才助言
今年1月にサラストレーナーの元を訪れている最中に新型コロナの感染が爆発的に拡大。4月に故郷の熊本で予定されていた防衛戦は中止になった。ラスベガスはロックダウンされ、森は合宿先の米国から帰国できるか、できないかわからない状況に追い込まれ「心が病む経験もした」という。 7月にボクシング興行が再開。やっと森の試合も組まれたが、当初の対戦相手は、ロンドン五輪銅メダリストで、OPBF東洋太平洋同級王者の清水聡(34、大橋)だった。仮想清水のサウスポー対策を始めていたが、正式発表を前に清水が練習中に怪我をして、この試合は流れてしまった。モチベーションをなくし、対戦相手がタイプのガラッと違うファイターの溜田に代わったことに周囲からは「やめよう」の声も出たが、森は気持ちを切りかえ聖地のリングに立つことを選んだ。 辛く長い1年を力に変えてきたからこそ、試合後、森は「空白の1年」の話をしたのである。 世界ランキングは4位。見据えるのは世界だ。 「タイミングと巡り合わせがあるが、決まった試合を1試合、1試合クリアしていくと世界が見えてくる。僕の階級のチャンピオンはみんな強いが、チャンスをもらえたら来年、近いうちに世界戦をやりたい。ラスベガスのリングに上がりたい」 WBOの世界王者は34戦32勝(27KO)と驚異のKO率を誇るメキシカンのエマヌエル・ナバレッテ(25)。減量が厳しく新型コロナ禍にスーパーバンタム級からフェザー級に上げていきなり2階級制覇を達成したトップランクが契約する軽量級のスター候補だ。スイッチしながら怒涛のパンチを繰り出す、超好戦的なスタイルが評価されている。スーパーバンタム級時代は、WBA世界バンタム級スーパー、IBF世界同級王者の井上尚弥(27、大橋)が、階級を上げてきたときに、一番手のライバルになると名前の挙がっていたボクサーである。マッチメイクは簡単ではないが、森陣営は、清水との仕切り直しの一戦も含めて、今後の世界ロードを計画していく方向だという。 痛めた拳の影響もあるのだろうが、フィジカル、パンチ力はまだ物足りなく見える。真っすぐ下がり、相手のペースに呑まれるなど世界のベルトを巻くには、まだ克服せねばならない課題はある。だが、1戦1戦、進化の姿を見せているのは確かである。父が剣豪、宮本武蔵にあやかって命名した、その名も武蔵…。ボクシングファンは、この未来ある21歳のボクサーを憶えておいた方がよさそうである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)