逆転TKO勝利で「世界挑戦したい」と宣言した21歳WBOアジア王者…その名は森武蔵…井岡&サラスの英才助言
プロボクシングのWBOアジアパシフィック・フェザー級タイトルマッチが28日、後楽園ホールで王者の森武蔵(21、薬師寺)と同級6位の溜田剛士(27、大橋)の間で行われ、森が11回1分39秒にTKOで勝利し3度目の防衛に成功した。森はこれで12戦(7KO)無敗。WBO世界4位にランキングされている武蔵は世界に照準を定めている。
「目が死んでいた」
見逃さなかった。 「もう目が死んでいたんです」 11ラウンド。判定では不利と見た溜田が勝負をかけて出てきた。名門、大橋ジムが送り込んできた刺客である。おめおめと敗者には甘んじない。森も引かずに応戦。溜田は右目の上辺りを切って流血した。「いったろうと思った」 森は一気にコーナーにつめる。激しくパンチを浴びせ、左ストレートが炸裂するとレフェリーの福地が試合をストップした。森は赤コーナーに駆け上がり、故郷の熊本からかけつけた応援団に向かって右手を突き上げた。 「この1年の空白を意味のあるものにするか、ないものにするか。この試合で決まると思っていた。意味あるものになった」 新型コロナ禍に振り回され、約1年ぶりのリング…武蔵は強くなって帰ってきた。 挑戦者はゴングと同時に思い切り右のブローを打ってきた。勢いあまって、ひっくり返るほど。前日のリモート会見で、溜田が「佐久間トレーナーからは1ラウンドから倒しに行けと言われた」という話をし、それが記事にもなった。森も目にしていた。 「来るのは予想していたが、ムキになってスイッチが入ってしまった」 序盤はステップワークを使い、溜田が仕掛けてくるインファイトに付き合わない戦略のはずが、それを忘れて殴り合った。 「男として付き合ってしまった」 左のボディに右フックをあわせられアッパーももらった。左右のボディの連打から明確な攻撃の時間を作られた。「パンチは効いていなかった」というが、見映えは悪かった。ジャッジの2人は1ラウンドから4ラウンドまでのすべてを溜田につけた。 作戦とはまるっきり逆の展開になったが、21歳のアジア王者は冷静だった。 「中盤相手のペースも落ちていた。スタミナ、体力面に自信があったので気持ちを切り替えた」