4人の新型コロナ感染者を出した名古屋グランパスが試合再開前に抱える不安とは…「正直、怖さがあった」
それでも感染者が集中している状況に、グランパスの選手やスタッフだけでなく、対戦チームも不安を募らせる。27日にウェブ会議形式で臨時に開催された、各クラブの代表取締役や理事長らで構成される実行委員会では、次節に対戦するレイソルからグランパス戦の開催延期が申し入れられた。 レイソルは感染予防対策を徹底するために、再開前に一度も他クラブとの練習試合を行わなかった。ブラジル人のネルシーニョ監督が70歳と高齢なことも不安視しているという指摘に、サンフレッチェ対グランパス戦の中止後に開催したオンライン会見で村井チェアマンはこう言及した。 「柏レイソルに限らず、すべてのクラブが感染への不安を感じているし、すべてのクラブが感染を拡大させないように努力している。なので、柏に対して何か特別な対処策があるわけではありません。いままで通りしっかりと行動を管理し、特に保健所などの濃厚接触の定義を確認して、次の試合前に実施する公式PCR検査の結果を踏まえながら、十分な対処をして臨んでいきたい」 おそらくは同じニュアンスの説明を、実行委員会の場でレイソル側にしたはずだ。その上でグランパスは独自にPCR検査を実施して安心安全の担保に努め、29日の検査では100人全員の陰性が確認された。ここまでの経緯を踏まえながら、中谷は感染しないことへの誓いを新たにする。 「グランパスから陽性者が多く出てしまったことで、相手チームも不安になったと思うし、Jリーグ全体にも迷惑をかけた。いままで取り組んできた感染予防対策をもう一度、しっかり徹底していきたい」 中谷にとってレイソルは小学校4年生から下部組織に所属し、トップチームで2014年10月にJ1デビューを果たした愛着深い古巣でもある。グランパスへの完全移籍とともに、敵味方に分かれたのが2018年6月。今季4勝2分けと無敗をキープしたまま、古巣との2年ぶり2度目の対決へ臨む。 「前節の試合がなくなったことは残念ですけど、それでもいままでの流れを継続して勝ちにいって、上位に食いついていきたい。いまの順位をキープしていく上で、次はすごく大事な試合になる」 1試合少ないながらも3位につけているグランパスは、リーグ最少の4失点と踏ん張る堅守が生命線を握る。対する昇格組のレイソルは3連勝中で、ベガルタ仙台との前節でハットトリックを達成し、8ゴールで得点王レースのトップに立つケニアの怪人、マイケル・オルンガが前線で脅威を放つ。 「PCR検査の結果次第でどうなるかわからなかった部分もあって、次の試合への準備を含めて、思い切って練習ができるようになったのは本当に今日からなんですよ」 中谷が苦笑いしたように、レイソル戦へ向けた全体練習の時間は極端に短い。中谷のように、検査結果が出るまでに不安に襲われた選手も少なくない。しかし、心身両面で背負うハンデを、もちろん言い訳にはしない。31日にはJリーグによる2週間に一度の公式PCR検査を受け、1週間で4度目となる陰性を安全安心へのパスポートに変えて、昨シーズンは一度もなかった4連勝を狙う。 (文責・藤江直人/スポーツライター)