何が浦和レッズ”お祭り男”槙野智章の復活を支えたのか…「意地と経験の差を出せた」
ジェルでがっちりと固めた七三分けのツーブロックから、前髪を下げたサラサラのナチュラル型へ。ヘアスタイルをピッチ上限定の戦闘モードから、ピッチ外を含めた日常生活で見せる通常モードに切り替えて、浦和レッズのDF槙野智章は試合後のオンライン会見に姿を現した。 「これまでのプロ生活のなかでも初めての状況でしたが、自分を考え直す非常にいい時間でしたし、悔しい時間でもありました。ただ、試合に出られない期間のなかでチームを外から見ることで、チームが苦しいときや連戦のなかで、自分がやるべきことをしっかりと整理していました」 敵地ニッパツ三ツ沢球技場で横浜FCを2-0で下した、26日の明治安田生命J1リーグ第7節。ミネラルウォーターを喉に流し込んでから振り返り始めた90分間は、新型コロナウイルスによる中断期間中に33歳になった槙野にとって、今シーズンで初めて先発を果たした一戦でもあった。 けがで戦列を離れたことはあっても、万全な状態ながらベンチにすら入れない日々は、サンフレッチェ広島時代を含めてJ1で343試合に出場してきた槙野にとって初めての経験だった。試合に出られない理由はただひとつ。新しいシステムのもとで、チーム内の競争で後塵を拝していたからだ。 昨年5月から指揮を執る大槻毅監督は、キャンプから時間をかけて戦い方を構築できる今シーズンへ向けて、最終ラインを3バックから4バックへ変更。前者で左ストッパーだった槙野の主戦場が後者では左センターバックへ変わったなかで、中断前に行われたベガルタ仙台とのYBCルヴァンカップでリザーブに、湘南ベルマーレとの開幕節では後半44分からの守備固め的な出場に甘んじた。
加えて、1月下旬に加入していた、U-23オーストラリア代表でキャプテンを務めるトーマス・デンが中断期間中にチームへフィット。スピードを含めた身体能力の高さを武器に大槻監督のファーストチョイスとなり、リオデジャネイロ五輪代表の岩波拓也とセンターバックを組む形が定着した。 再開後のレッズが2勝1分けの星を残し、ベルマーレに勝利した開幕節と合わせて無敗を継続していたなかで、槙野は「まだまだ世代交代の波にのまれるわけにはいかない。このまま終わる僕じゃないので、何か違いを出していきたい」とファイティングポーズを失ってはいなかった。 そして、デンの負傷離脱とともにレッズの歯車が狂い始める。18日のFC東京戦で0-2、22日の柏レイソル戦では0-4とともに完敗で黒星が続いた苦境で、槙野が違いを出す状況が訪れた。 「いつ自分が呼ばれるのか、いつ試合に出るのか、というところは常に準備していましたし、その点に関しては大槻監督ともコミュニケーションは取れていました」 試合に出られない日々をこう振り返った槙野は、ピッチの外からレッズを見る側にまわって、特に5日間で2度も喫した完敗を介して共通する傾向に気がついたと明かす。 「チームのなかでちょっと元気がないし、声も少ないし、コミュニケーションを取っている姿もあまり見受けられなかった。1点を失った後のゲーム運びや選手たちの表情というところで、点を奪い返しにいく、逆転しにいくという姿勢も見受けられなかったので、僕が入ったことでそこを変えられるんじゃないか、と。ピッチ上でそういう雰囲気作りを徹底しよう、と今日は心がけていました」 槙野と同じく開幕節以来の出場となった、30歳の鈴木大輔とセンターバックのコンビを結成。今シーズンからキャプテンを務める34歳の守護神、西川周作とともに後方から「90分間を通して声をかけ、我慢する時間帯は我慢して、盛り上げるべき場面は盛り上げる」と誓い合った。