客入れ解禁のJ1で一部サポが犯した応援禁止行為…問題視の村井チェアマンは”強制排除”を示唆したが撲滅手段は?
いつものように口調は穏やかだった。パソコンの画面越しに見える表情にも怒気は刻まれていない。それでも、Jリーグの村井満チェアマンが発した言葉の端々からは、ガイドラインで禁止されている行為が発生した問題に対する無念さ、もっと言えば悲しさが伝わってきた。 「サッカーを愛する人であれば、起こりえないような行為だと大変残念に思いました。多くのファン・サポーターが気をつけながら再開を望んでいたわけですけれども、その意味でもそうした行為が起こったことで、まずは仲間のファン・サポーターが残念な思いをされたのではないか、と」 オンライン形式で16日に行われた月例理事会後のメディアブリーフィング。制限付きでの観客の入場・観戦が解禁された12日の浦和レッズ対鹿島アントラーズ(埼玉スタジアム)で、レッズの一部サポーターによる指笛や大声を出しての応援が発生した件を問われた村井チェアマンは、Jリーグが定めた「新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」の遵守をあらためて呼びかけた。 「私は指笛を上手く吹くことはできませんが、非常に多くの飛沫が飛ぶような内容ですよね。その意味ではファン・サポーター自らが、仲間のファン・サポーターを危険にさらすような行為だろうと思っています。症状のない健康な方が実は陽性である事態が十分にありうるわけであり、そのなかで陽性反応が明らかになってくれば、通常以上に濃厚接触の範囲が拡大される懸念もあるので」 無観客試合改めリモートマッチとして先月27日にJ2再開とJ3開幕を、今月4日からはJ1を再開させたJリーグは、政府の定める「イベント開催制限の段階的緩和の目安」に沿って、10日からは5000人もしくは収容人員の50%以下のうち、少ない方での観客の入場・観戦解禁へと移行した。
例えばJ1はほとんどのクラブで、5000人を上限としてチケットを販売した。そのなかで前出のガイドラインにおいて、指笛や歌など声を出しての応援や手拍子、タオルマフラーや旗などを振り回しての応援、メガホンや太鼓など鳴り物の使用、ハイタッチや肩を組む行為などを禁止した。 そこまで徹底するのか、と思われる対象に手拍子がある。Jリーグとしては日本野球機構(NPB)と共同で設立した新型コロナウイルス対策連絡会議で招聘した、感染症の専門家チームによる助言を生かしながら、16日の改定をへてトータルで73ページに達する厳格なガイドラインを作成した。 再開後のスタジアムから新型コロナウイルスの感染者を出さないために、微に入り細をうがつような内容となった経緯がある。しかし、ファン・サポーターの観戦が解禁された初戦で禁止行為が繰り返された。1-0でアントラーズを下した試合後には歌も歌われたことを含めて、レッズは公式ウェブサイトで15日付で謝罪するとともに、あらためてガイドラインの遵守を呼びかけた。 「浦和レッズも改善へ向けて啓発をしていきますし、Jリーグとしても重ねて啓発を続けていきます。今回の感染防止対策は命令で改善できるものではなく、(サッカーにかかわる)一人ひとりのみなさまのご理解と行動改善においてのみ実現できるものなので、レッズに限定することなく、多くのファン・サポーターにも啓発を呼びかけながら重ねてお願いをしていくつもりです」 オンライン会見でこう言及した村井チェアマンは、レッズを含めた全56クラブの代表者宛に15日付で、木村正明専務理事の名義でガイドラインの遵守を呼びかけるメッセージを送ったことも明らかにした。その視線は次なるステップとなる、8月1日以降へ向けられている。