4人の新型コロナ感染者を出した名古屋グランパスが試合再開前に抱える不安とは…「正直、怖さがあった」
長期中断から公式戦を再開する上で、Jリーグは各チームから新規感染者が出る事態が今後も起こりうると判断。その上で最低でもゴールキーパー1人を含めた14人をそろえられれば、予定通り試合を開催できるというコロナ禍での特別規定を試合実施要項に追加している。 最終的には渡邉とトップチームスタッフの濃厚接触者はいないと判断された。しかし、保健所が確認作業を終えるのが午後6時の試合開始に間に合わない可能性が出てきたため、Jリーグの村井満チェアマンとグランパスの小西工己代表取締役社長による緊急会談で26日の午前中に中止が決まった。 このときにレイソル戦を安全安心に開催するために、対象を100人に広げたPCR検査を27日と29日に実施すると小西社長は明言した。そして、27日の検査で選手寮運営業務委託先に所属する調理業務スタッフから陽性反応が出たことが、翌日にグランパスから発表された。 この調理業務スタッフの濃厚接触者も、クラブ内にはいないと判断された。しかし、万が一の事態に備えて、選手寮在住の6人の若手選手は28日から再開された練習参加を見送っている。すぐ身近に新型コロナウイルスの脅威が潜んでいる恐怖を、特に夜の間に感じたと中谷は振り返る。 「全国的にもそうですけど、愛知県や名古屋市でも感染者が増えているなかで、PCR検査の結果が出るのもいままでと比べてちょっと遅かったというか。その日の夜ではなく、翌朝になることもあったなかで『もし自分が陽性だったらどうしよう』とか、あるいは『家族にうつしてしまったらどうしよう』という怖さがありました。もちろん、いまでは安心していますけど」 おりしも30日の愛知県の新規感染者は160人と、過去最多だった前日の167人に次ぐ多さを数えた。そのなかで108人と初めて3桁に到達した名古屋市は、人口約230万人に対して1日あたりのPCR検査能力が433件と極端に少なく、市中感染が見逃されるリスクが指摘されている。 練習拠点を名古屋市ではなく豊田市に置くグランパスは、6月上旬にFW金崎夢生とGKミッチェル・ランゲラックが相次いで感染。以来、感染予防対策を徹底してきた。宮原や渡邉も練習以外の外出を買い物など必要最低限にとどめてきたなかで、それでも感染してしまった。 「保健所及び市当局の指導に従いながら厳正に対応してきましたが、複数名の感染者が出ていることに関しては、いまのところそれぞれの繋がりが確認されていません」 小西社長がこう語るように、それぞれの感染経路はわからない。日本野球機構と共同で設立した新型コロナウイルス対策連絡会議で招聘している感染症専門家チームの一人、愛知医科大学大学院の三鴨廣繁教授はグランパス内にクラスターが発生しているのでは、という指摘を否定している。