奇策?いや才能…超大型DFながらFW起用されアビスパ福岡の執念ドロー演出した20歳の三國ケネディエブスが面白い!
思いが完璧に一致した。終盤になってリードを奪われる展開に指揮官も、ウォーミングアップに余念のなかった20歳のセンターバックも同じ展開を考えていた。チャンスはセットプレーしかない、と。 迎えた後半35分。アビスパ福岡の長谷部茂利監督が、最後となる5枚目の交代カードを切る。ベンチ前に呼び寄せた、今シーズン初出場となる三國ケネディエブスと以心伝心で言葉が交わされた。 「フォワード、できるか」 「はい、もちろんできます」 ホームのベスト電器スタジアムに愛媛FCを迎えた、29日の明治安田生命J2リーグ第8節。先制されてから5分後に、三國が途中出場してからはわずか2分後に決めたプロ初ゴールが、敗色濃厚だったアビスパを1-1のドローと、徳島ヴォルティスを抜いての3位浮上へと導いた。 起死回生の同点ゴールは身長192cm、体重80kgのサイズを誇る三國が絶対的な自信をもつヘディングから生まれた。後半37分に獲得した右コーナーキック。ボールをセットするDFエミル・サロモンソンが蹴る弾道をイメージしながら、三國は「点を取る」と何度も自らに言い聞かせていた。 「チームが負けているときに、フォワードとして出る自分に何ができるのか、と言われたらやはり得点に絡むことなので。僕自身もパワープレーでの出番はあると準備していたし、そのなかでもセットプレーのチャンスは絶対にあると思っていたので」 右利きのサロモンソンがインスイングで蹴ったボールが、ゴールから遠ざかる軌道を描いて飛んでくる。ペナルティーアーク付近にポジションを取っていた三國は、ニアサイドへと猛ダッシュ。マーカーのMF長沼洋一に身体を当て、その反動で宙を舞う体勢からボールに頭を叩きつけた。 地をはうような弾道と化した強烈な一撃が、ワンバウンドしながら愛媛ゴールを射抜く。プロになって2年目、通算12試合目にして初めて覚える快感に、三國は「公式戦で点を取るのは高校生のとき以来なので。最初は緊張しましたけど、その後は気持ちよくプレーできました」と声を弾ませた。