「ヤブヘビで公選法違反も…」斎藤元彦知事、PR会社女社長の”自己顕示欲”であらわになった「SNSと選挙」を巡る課題
前回の本コラムで、兵庫県知事選で斎藤元彦前知事が当選した結果について分析した。 【前回記事はこちら】『「斎藤知事への内部告発は不可解なことが多すぎる…」舛添要一元東京都知事が指摘、兵庫県政の「大いなる違和感」と「地方政治の惨状」』 【写真】再逮捕された「美人すぎる寝屋川市議」の写真集全カット その中で、SNSが大きな影響力を持ったことを指摘したが、そのSNSも含め、選挙後も様々な問題が噴出し、すぐには兵庫県政安定という状況にはなりそうもない。
斎藤陣営は「公選法違反はない」と否定
斎藤陣営のSNS運用について、西宮市のPR会社の社長が、SNSに11月20日付けで「広報全般を任せてもらった立場」とした上で、陣営のSNSの運用に関して「私が監修者として、運用戦略立案、アカウントの立ち上げなどを責任を持って行った。会社が手がけた」と記した。 総務省は「一般論として、業者が主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行う場合には、業者への報酬の支払いは買収となるおそれが高いと考えられる」としている。「主体的・裁量的」という役所言葉では何のことか分からないが、要するにボランティアということである。 斎藤陣営は、ポスターデザイン制作費などの5つの名目で70万円余を支払ったというが、主体的な企画立案への報酬ではなく、問題はないとしている。しかし、この問題が大きくなる可能性もある。
SNSが原動力になったのは事実
SNSが斎藤勝利の原動力となったことは疑いない。内部告発した元局長が自殺したこともあって、「パワハラ」、「おねだり」などの知事の行為が批判された。その結果、県議会は全会一致で知事不信任案を可決したのである。 3月中旬に局長が内部告発文書を公表して以来、この問題はマスコミが挙って取り上げるところとなり、斎藤批判の大合唱が起こった。とくにテレビのワイドショーは「斎藤吊るし上げ」一色となり、テレビ局の意図を受けたタレントや「有識者」が斎藤バッシングに走った。 東京都知事だった私は、8年前に同じような「魔女狩り」の被害を受けたので、一切のコメントを断り、静かに推移を見ていた。 8年前にはSNSはほとんど普及してなく、スマホ愛用者の私もあまり活用していなかったし、情報発信の道具として広く使える状態ではなかった。週刊誌の報道の半分以上が虚偽であったが、こちらには反論するツールがない。 テレビのワイドショーは、何の取材もせずに週刊誌報道を垂れ流すのみであった。私を擁護する意見を述べた識者やタレントは、かわいそうなことに、番組から降ろされてしまった。 それだけに、8年前にSNSが使えれば、きちんと反論できたのにと、残念でならない。都知事辞任後も私に仕事を依頼するメディアはほとんどなかったが、SNSを使って細々と自らの主張を世に問うている。私にとっては、ありがたいツールである。 斎藤の場合、限られた数の支持者がSNSで発信し、それがリツイートされて大量に拡散された。16アカウントが発信した786件が転載(リツイート)され、それが49万件に膨れ上がったが、これは、選挙期間中の斎藤支持投稿99万件の半数に当たる(『読売新聞』2024年11月24日)という。 このSNSを視た有権者が、そこに記されている「斎藤元知事は悪くない」という情報を信じ、街頭演説にも駆けつけたのである。とくに若い世代にその傾向が強く、10代~20代では7割が斎藤に投票している。