「ヤブヘビで公選法違反も…」斎藤元彦知事、PR会社女社長の”自己顕示欲”であらわになった「SNSと選挙」を巡る課題
既存メディアの地盤沈下
斎藤知事問題について、何が本当なのかよく分からない人が新聞やテレビなどの既存のメディアに当たっても、必要な情報が入手できない。また、新聞記事はネットで読もうとすると、有料記事になっているので、冒頭しか無料で読めない。そのため、最初から相手にされない。 したがって、SNSを参照し、YouTubeなどで情報を得ようとする。そこには、間違った情報や不正確な噂話などが多々あるが、それを信じてしまうのである。 既存のメディアは公選法、とくにテレビ・ラジオは放送法の縛りがあるために、どうしても情報提供に限りがある。たとえば、各政党の主張を、量的にも質的にも公平に取り扱わねばならないため、深掘りした報道ができない。その点では、SNSは全く自由である。 本来は、SNSで得た情報が正しいのかどうかを知りたい人が、既存メディアによって正確な情報を得るというのがあるべき姿である。ところが、そうなっておらず、逆転現象が起こっている。 新聞購読者の数が激減しているし、テレビも地上波を視聴しない人が増えている。既存マスコミへの人々の依存度が激減しているのである。その意味で、既存のメディアの地盤沈下は甚だしい。
敵の攻撃にも使用されるSNS
兵庫県知事選挙の後、この選挙を巡って様々な問題が噴出している。 斎藤に敗れた元尼崎市長の稲村和美の後援会は、選挙期間中にSNSのアカウントが凍結されたが、それについて偽計業務妨害の疑いで兵庫県警に告訴状を出した。不特定多数の人物がSNSの管理者に対して虚偽の通報を一斉に行ったようである。 11月6日、後援会のX(旧ツイート)の公式アカウントが凍結されたという。そこで、12日に別のアカウントを開設したが、これも当日に凍結されたという。 おそらく、斎藤支持派の誰かが、「稲村後援会によるX投稿によって斎藤の選挙運動が不当に妨害された」などという嘘をXの管理者に対して一斉に通報して、ルール違反だとして凍結させたものと思われる。 また、不特定多数の人物が、稲村が「外国人参政権を進めている」、「県庁建て替えに1000億円かける」、「尼崎市長時代に退職金を大幅に増額させた」などという虚偽事項をSNS上に投稿したという。これについても、選挙妨害だとして、公選法違反の疑いで告発したという。 11月24日に行われた名古屋市長選では、自民、立民、国民、公明が推薦する元参議院議員の大塚耕平が、河村たかし前市長の後継者の元副市長広沢一郎に敗れた。 この選挙でも、SNSで、大塚に対して、「増税する」とか「外国人参政権に賛成」といった嘘が流されたという。大塚は、 「(SNS上で)デマ、誹謗中傷、レッテル貼りの影響というのも一定程度あったと思う」、「ある意味、選挙妨害に近い行為なので、今後どういうふうに対応していくか政治全体の課題だと思います」と述べている。 以上のように、敵陣営を攻撃するためにSNSを使って、嘘を発信することは望ましいことではない。公職選挙法にはSNSに関連する規定はほとんどない。法律が現実に追いついていない感じである。 SNSと選挙に関して、さらに議論を進め、時代に適合的な公選法に改正しなければならない。