脳腫瘍、悪性リンパ腫、白血病、大腸がん、肺がんを乗り越えたIT社長…闘病と体力回復のリアル
起業した会社に戻りたいのに戻れない
しかし、リハビリを続けながら少しずつ会社に顔を出せるようになってしばらくすると、幹部社員から、 「高山さんがたまに会社に来て社員に指示を出すと現場が混乱します。100%働けるようになったら会社に戻ってきてください。それまでは会社は自分たちが守りますから、高山さんは療養に専念してください」 と言われてしまいます。 思いがけず老害の一歩手前、いや老害そのものになっていました。 早く体力を回復して会社に戻りたい、と焦ってリハビリをがんばるのですが、体力は思ったようには回復しません。病気になる前を100%とすると、感覚としては50~60%程度がせいぜいです。 そして、あるとき気づきました。 ここからどんなにリハビリに励んだとしても70%程度まで回復するのがいいところではないか。100%、いや90%にすら戻すのは無理なのではないか、と。 つまり、もう以前のように仕事をすることはできないと悟ってしまったのです。 もはや経営者として以前のように自分が納得できるような働き方ができないのであれば、自分はどうすべきか。 自分にとって、会社にとって、社員にとって、どうするのが一番いいのか、何か月も悩みました。 そうして悩みに悩んだ結果、仕事も、経営者の立場も、そして会社そのものも手放すのが、自分にとっても会社にとっても一番よいという考えに至りました。 中途半端に会社にぶら下がり、創業者で大株主であるというだけで、大した仕事もせずに会社から給料を吸い上げるようなことはしたくありません。 だったらきっぱりと会社から身を引こう、と思ったのです。 そして、会社は意欲にあふれた新しい社長に任せて引っ張っていってもらうのが、会社と社員の今後の成長のためにもよいのではないかと考えました。 健康不安を抱えた社長の経営する会社では、社員も取引先も先行きに不安を感じて当然です。 とは言え、自分のアイデンティティでもある会社を本当に手放せるのか。 会社と仕事を手放した後、自分は何をして生きていくのか。 働く父親の背中を子どもに見せなくていいのか。 そもそも自分の収入がなくなったら、家族3人でどうやって食べていくのか。