なぜ18歳の女性ジョッキー今村聖奈の重賞初騎乗初制覇の快挙が生まれたのか…勝負度胸と綿密な下準備
小倉競馬場で3日に行われた第58回CBC賞(1200メートル芝、GⅢ)で今年3月にデビューした18歳の女性ルーキー、今村聖奈騎手(栗東=寺島)が騎乗した2番人気のテイエムスパーダ(牝3=五十嵐)が1分5秒8のJRAレコードで逃げ切り勝ちを収めた。デビュー年の重賞初騎乗初制覇は史上4人目ながら女性騎手では初。48キロの軽ハンデを生かした度胸満点の騎乗が光り、ニューヒロイン誕生を予感させた。
驚愕のタイムで1200mを逃げ切った
ニューヒロインの誕生と言っていいほどの痛快な逃亡劇だった。サマースプリントシリーズの第2戦。1200メートルの電撃戦とあって、17頭立てのレースには快速馬がそろったが、ゲートが開くと、大人びた18歳の女性騎手は、迷うことなく先頭に立った。このアグレッシブさと肝の太さが栄光をもたらした。あどけない笑顔を浮かべながらも、どこか涼しげなところが頼もしい。 「うれしいです。チャンスのある馬に乗せていただき、馬は最高の状態に仕上げていただいていたので、あとは人がどうアプローチするかがカギだと思っていました。馬の力を信じて自信を持って乗れたのが良かったと思います」 時計は何と1分5秒8。9レースの芝2000メートルで1分56秒8のレコードが飛び出しており、ある程度の高速決着は予想されていたとはいえ、日本の競馬史上初めて6秒の壁を破るという驚異的なタイムをマークして重賞初挑戦で初勝利をつかんだ。JRA女性騎手の重賞制覇は、2019年カペラS(コパノキッキング)の藤田菜七子騎手以来2人目である。ちなみに藤田はデビュー4年目にしての優勝だった。 スタートから11秒4、10秒0、10秒4のハイラップを刻み、前半600メートルは無謀とも思える31秒8で通過した。この瞬間、実況アナの声が裏返ったほどだ。しかし、超高速馬場を計算した上で、テイエムスパーダに無理な負担をかけていなかった。 「きのう初めて小倉競馬場で乗せていただいて、今週の騎乗馬のラインナップは先行有利の減量を生かしたレースをすることが多くて、きのう、きょうと先行力で前め前めのレースをしました。その中で失敗してしまったなと思うレースもあったので、いろいろ試行錯誤しながら、このレースに向き合いました」 脚色は最後まで衰えることはなく、最後の直線は何とターフビジョンで後続との差を確認するほどの冷静さもあった。 「セーフティーリードだと思ったので、最後までハンドライドで追うことを意識していました。逃げ切る気持ち良さを感じながら人馬一体になれたのではと思います。観客の方の声援も聞こえ、お客様に喜んでいただけていたなら最高です」