なぜ18歳の女性ジョッキー今村聖奈の重賞初騎乗初制覇の快挙が生まれたのか…勝負度胸と綿密な下準備
生まれもった才能があるのかもしれない。 父の康成さんは障害を中心に活躍していた元騎手で、現在、飯田祐史厩舎の調教助手。小学校低学年のころからトレセンや競馬場に出入りしていた。今村は、父の背中を追い、騎手になることを決断してからは、その明るい性格と、「鞍はまりがいい」という評判が厩舎から聞かれ、調教で多くのオープン馬にまたがるチャンスにも恵まれた。その経験値と技量は、並みのルーキーではなかった。 この日のCBC賞の逃げも凄みがあったが、直後の最終レースではまるでベテラン騎手のような巧みなコース取りからイン差しを決めてもいる。 憧れのジョッキーは武豊。デビュー前に逢う機会があり、「これまでの女性ジョッキーの記録や歴史をすべて塗り替えるぐらい、活躍してよ」とのエールを送られた。実際に女性騎手の記録を次々と塗り替え、同期の新人でも断トツの19勝をマークしている。 その武豊騎手は、遠征先の函館競馬場でこの快挙を聞き「スタートを決めた時点で勝負あったね。時計がびっくり。チャンスをもらってきっちり結果を出すのはえらいですね」と祝福した。 研究熱心で、冷静でいて、クレバー。そして度胸がある。 騎手に必要な資質のすべてを兼ね備えた上に、与えられたチャンスをつかみ即答えを出すという、勝負運を“持っている”のも魅力である。 そして何より、彼女が、今後、スタージョッキーになる可能性を感じさせるのは、人としての感謝の気持ちや謙虚さを失っていない点にある。 この日の勝利インタビューでも、「スタート直後に少し他馬に妨害行為をしてしまったのは、反省すべき点だと思っています」と話し、今回の乗り代わりについても「本来であれば国分恭介さんがずっとていねいに調教をつけてくださった馬で、斤量の関係でたまたま私が乗せていただくことになったんですけど、あらためて関係者のみなさまに感謝の気持ちでいっぱいです」という言葉を口にしている。 今年3月、ボートレースでは遠藤エミ選手が女性レーサーとして初めて最高峰のSGを制覇し歴史が動いた、と言われた。かつては足手まとい、お荷物とまで言われた女性ジョッキーだが、確実に時代の流れは変わりつつある。 今村の期待に応えたテイエムスパーダの次走は、状態を見ながら同じ舞台の北九州記念(8月21日、小倉)を視野に入れているとのこと。このままコンビを継続してサマーシリーズの顔になるかもしれない。