なぜ18歳の女性ジョッキー今村聖奈の重賞初騎乗初制覇の快挙が生まれたのか…勝負度胸と綿密な下準備
新人らしからぬ手綱さばきと受け答え。これには元騎手でテイエムスパーダを管理する五十嵐忠男調教師もうなるしかなかった。 「どないな心臓してんねん。緊張しないなんて大したもの。初重賞で自信を持って乗ったなんていうのも大物だね。何も言うことないでしょ。あのペースにビックリしたし、さすがに止まるのではないかと思ったけれど、4角を回ってこれは残る、と思った。ラスト1ハロンでは勝ったと思ったよ」 18歳の少女の快挙の裏には理由がある。 もちろん、負担重量が軽いというメリットはあった。しかし、重量48キロの馬によるJRA重賞レース勝利は2008年マーメイドSのトーホウシャイン以来でわずか3頭。決して軽ければいいというものではなく、また偶然の勝利でもなかった。 快挙の理由のひとつが事前の準備力である。週初めに体重の軽さと腕を見込まれて騎乗が決まると、それまでこの馬とコンビを組んでいた国分恭介騎手に連絡を取り、癖やストロングポイントなどアドバイスを受けた。水曜日は追い切りにまたがり初コンタクト。直前の土曜日も早起きして午前6時から小倉競馬場での最終調整に騎乗し、手応えを感じていた。 五十嵐調教師とも綿密に作戦を練った。 「スタートで出たら行けばいい。スタートだけ気をつけなさい。48キロなので変にためる競馬よりも、前に行って、それで止まったら仕方ない」 そう背中を押されて迷いが消えた。 「本当に馬は絶好調の状態で小倉に来てくれていたのは分かっていましたし、昨日コンタクトを取った時点で本当に馬は仕上がっているので、人間がしっかり馬をアプローチすると結果につながるのではないかと思っていました」 テイエムスパーダは3歳2勝クラスの格下ながら前走を好内容で快勝。48キロの軽量なら少なからずチャンスはあると見られ、レースに向けできることはすべてやったのである。 そして、レース前のパドックで見せた笑顔に驚いた人も多かったのではないか。 2番人気に支持されたが、リラックスしていた。持ち前の勝負度胸。レース前には、18歳の女性騎手の重賞初挑戦がメディアの注目となっていたが、ナーバスになることはなく「馬も若いですし、私も若いので、フレッシュで活気ある騎乗をして、いいレースをしたいです」と語るなど堂々としていた。 こういう騎手の落ち着きが馬にも好影響を与えると言われる。