世界が注目する期待の大型新人! ローカルガストロノミーを進化させる新進気鋭のフレンチ・シェフの展望に迫る
本田:ちゃんとやりたい、早くできるようになりたい人にとっては、なかなか、厳しいよね。8時間労働だけで何とかしろというのは。「RED」のとき、26歳でグランプリが取れると思っていた? 余裕だぜ、みたいな。
糸井:いやいや。「RED」は初めて個人として出たコンクールなんです。そのなかで自分がどういうポジションで、どこまでできるのか。一つの指標として応募しました。一つ一つのステージごとに課題があって、その課題に向けて、今、自分ができる最大限の準備を常にしていきました。それが結果につながったのかなと思います。 本田:いけそうな気はしていた? 糸井:1次の書類と2次の動画の審査は、正直ちょっとわからなかったですね。3次が実技で、そこでふるいにかけられました。そのとき、準備や作業ぶりを周りと比べると、自分の方が慣れているかなとは思いました。 本田:年齢も上の人たちがいっぱいいたわけだよね。 糸井:多分、若いときに出場した「ボキューズ・ドール」の経験が生きていたと思います。後はもう、日々の仕事の積み重ねですね。 本田:芦屋のときには、結構、任せてもらってた。 糸井:最後の味付け、フレンチで言えばソースですけど、そこまでやらせてもらってました。 本田:それも大きかったね。
地方ならではの美食を実現し、さらにその先の景色を描く
本田:「RED」でグランプリをとって、そこから4年でオーフのシェフになった。タイミングもだけど、そういう声がかかるというのも強運を持っているよね。なかなか、ないじゃん、そんな話。
糸井:出身地でもなく、まだ海外に行きたい気持ちがあったんですけど、北陸ガストロノミーが注目され始めている時期だったので、とりあえず1回見てみようと、小松に行ったんです。行ってみると、とてもいいところで、しかも規模が大きい! 行った日の夜の会食で「やります」と言いました。やらない理由もたくさんあると思うんです。でも、何をもって成功かはわからないですけど、「オーフ、すごいね」みたいになったときに多分見える景色があると思うので、それを見てみたいなと思いました。自分の地元ではない地方で料理を表現していって、どういうことができるのかにも魅力を感じましたね。迷っていても仕方ない、とりあえずやるという感じです。