まだ生成AI「否定派」が多い教育現場のリアル、教員の「忙しすぎ問題」解決できるか?
教員の忙しすぎ問題、「生成AIで解決」できるか?
大学教育の世界において多くの変化をもたらすと確信している伊藤氏だが、中でも大きなメリットがある領域として挙げたのが教員の業務効率化だ。 現在、大学教員は「忙しすぎる」ことが問題視されている。事務資料や講義資料の作成にとどまらず、大学内にある委員会を複数掛け持ちしなければならないケースも多々見られる。 「大学教員は、これまで以上に忙しくなっています。もともとなかった業務や新しい会議、管理資料などが増加しているのに加え、大学運営経費の削減により教員1人当たりの平均的な仕事量が増加しているためです」(伊藤氏) だが資料作成といった多くの業務を生成AIで自動化することで、教員の負担が大幅に軽減されることが期待されている。 「生成AIを活用すれば、事務作業の効率化と同時に、研究面でもさまざまなメリットを得られるでしょう。たとえば、先行研究論文の要約に生成AIを使って膨大な文献の速読に用いている人もいますし、和文の研究内容を英文に翻訳する作業の一部に利用している人もいます。さらに、生成AIが教員の事務処理を効率化できれば、本来の仕事である研究や教育改善に費やす時間を増やせるのではないでしょうか」(伊藤氏) さらには、学生と教員の対話時間の確保にもつながることが期待される。先述の通り教員が会議や出張に追われる一方で、学生も就職活動の長期化やアルバイトの増加等により学内に滞在する時間が減る傾向にある。それにより、学生と教員の対話が減少していることが課題となっている。 「コロナ禍以降、学生が学校で過ごす時間が減り、教員も多忙なため、対話の機会が少なくなっています。生成AIを活用して教員も学生も共に『忙しすぎ問題』を解決できれば、お互いの対話の時間も増えていくのではないでしょうか」(伊藤氏) 生成AIがもたらす効率化によって生まれる新たな学びの場が、今後の大学教育の変革につながっていく可能性に期待したい。
聞き手・構成:編集部 井内 亨、執筆:行政・ITライター 小池 晃臣