まだ生成AI「否定派」が多い教育現場のリアル、教員の「忙しすぎ問題」解決できるか?
教育現場において、生成AIは「レポート作成などの不正に使われるツール」「そもそも使い物にならない」など批判されるケースが散見される。一方、学生が生成AIの不完全な回答を自ら修正するというユニークな課題に取り組む(前編参照)お茶の水女子大学の伊藤 貴之教授は「学生、教員の両観点で見ても、生成AIは大学教育を変革させる未来は近いと感じます」と期待を込める。中でも、「忙しすぎる問題」を抱える教員の救世主になれる可能性を秘めるという。そこで今回、伊藤氏に、教育現場における生成AI活用の実態や課題、もたらす変革などについて話を聞いた。 【詳細な図や写真】
生成AI利用率「学生30.3%」「教員19.3%」
生成AI利用について、教員と学生では異なる実態が見受けられる。仙台大学が行った生成AI利用に関する調査では、大学生・大学院生の生成AI利用率が34.9%であるのに対し、教員の利用率は36.8%と上回っていた。 しかし専門学校や高校などを含めた全体の結果では、学生(生徒)が30.3%、教員は19.3%と大きな差が見られた。一般的に若い世代の方が生成AIの利用率が高い傾向にあるが、大学教員の場合、教育だけでなく、研究活動にもAIを取り入れ始めていることで利用率が高まったと考えられるという。 学生と教員の生成AI利用率を比較 (出典:仙台大学調査資料) 生成AIに関する課題を学生に課すなどAI教育を実施している伊藤氏も、大学教育における生成AI活用の可能性の高さに注目。授業期間中の小テストや軽い復習課題において、生成AIの積極的な利用を推奨している。 「生成AIは強力なツールであり、学生にその活用機会を与えることが重要だと考えています。自分が担当しているいくつかの科目では、講義資料参照や生成AI使用を許可したオンライン小テストを実施し、その後に資料参照不可の定期試験を行っていますが、小テストの答案には生成AIを使ったと思われる答案が増えたように感じています。そのほか、授業を欠席した学生が、欠席した週の学習を生成AIの活用によって補強することも可能です」