開局60周年!テレビ東京のさらなるチャレンジ
テレビ東京が11月に開催した「テレ東60祭」は、同局の今を象徴するイベントだったかもしれない。これまでのテレビのイメージを超えるような取り組みに邁進するテレ東の現状は…(編集部)
開局60周年を記念した全社的なイベント
テレビ東京はこれまで制作局内に「クリエイティブビジネス制作チーム」という名称で異能の制作者を集め、新たなビジネス開発を進めてきたが、部長としてそこに関わってきた伊藤隆行さんが2023年4月に制作局長になった。これまで取り組んできた試みを、制作局全体で推進することになりそうだ。 23年11月には、開局60周年イベント「テレ東60祭」が横浜で開催された。まずはその話から紹介しよう。 「『テレ東60祭』は昨年、私が発案企画したものですが、開局60周年を記念して会社全体としてやることになりました。来場者が目標7万人の倍以上の14万5000人と大成功しました。 例えば『やりすぎ都市伝説』という、これまでも特番やイベントを実施してきたコンテンツですが、その有料ステージイベントを行いました。Mr.都市伝説・関暁夫が登場して、『空が赤くなる前に…』というタイトルで最新の都市伝説や日本の未来について話すのですが、その配信イベントには1万8000人以上が集まりました。前の週の金曜21時に2時間のスペシャル番組を告知を兼ねて放送し、それを受けてイベントを開催し配信も行ったわけです。 放送だけでなく、お客さんが足を運んで体感する、それができない方はライブ配信でご覧になる。ひとつのコンテンツがいろんな形で届けられるわけですね。 それから『祓除(ふつじょ)』というイベントも制作局の若手が企画制作しました。ゾッとするようなフェイクドキュメント系のコンテンツですが、これも事前に放送し、イベントをやって配信するという形でしたが、チケットが1万枚近く売れました。テレビではフェイクドキュメントやホラー系のレギュラー放送はあまりないのですが、こういうものを観たい方が確実に存在するのだとわかり、次の可能性が出てきました。 いま2つのコンテンツを紹介しましたが、それ以外に10を超えるステージもやっており、こういうイベント自体がコンテンツなのだと実感しました。テレビ局は視聴者に『体験』を届けるコンテンツメーカーになったわけです。 例えば『きのう何食べた?』というヒットドラマとコラボした、カレーを食べられるブースや、『開運!なんでも鑑定団』『デカ盛りハンター』の公開収録、『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』の企画では、出川哲朗さん自身が会場にスイカメットとつなぎ姿で現れました。そんなふうに、いろいろな番組コンテンツを『テレ東60祭』で視聴者の皆様に実際に触れてもらったのです」 新たな取り組みを続ける中で、ヒットの芽も生まれているという。 「4月に制作局長になった際に、新しいタイプのヒットコンテンツを生み出すためのプロジェクトを立ち上げ、制作局内に企画を考える5~10人ぐらいのチームを6つほど作りました。そこから生まれた企画のひとつが『何を隠そう…ソレが!』という番組です。スタジオショーですが、ヒット商品の誕生秘話や歴史上の人物の知られざる秘密などを楽しく学べるもので、4月に企画して夏に特番を放送し、年末年始に2回目を放送します。新たなレギュラー番組になることを期待しています。 また、ある場所の境界を一周する『風磨とチョコプラのふちど~るマップ』というロケバラエティも7月に1回特番をやり、年末年始に2回目の放送を予定しています。ある地域や島、湖などのふちを1周するという番組で、1回目は下北沢をたった2時間で1周しました。もともとこの企画は、県境を1周すると面白いんじゃないかという発想から生まれました。なぜここに境界線があるのか考えることで歴史を学べるわけです。土地を知るというコンセプトですね」(伊藤局長) 前述したプロジェクト発の企画で、10月からレギュラーになった番組もある。 「火曜23時に放送している『秋山ロケの地図』は、ロケの1カ月前に置いた白地図に地元の人が書き込んだおすすめの場所にロバート秋山が行くという番組です。通常はロケ番組の前に下見をしますが、この番組は、ロケハン自体を地元の人にやってもらうわけです。 あと番宣番組を面白くしようとしたのが土曜日の昼11時から放送している『伊集院光&佐久間宣行の勝手にテレ東批評』です。SNS世代にも響くようにとつくりました」(同) 年末年始の特番では、そのほかにも今後につながる企画が目白押しだ。 「テレビ東京はいまだに『TVチャンピオン』のイメージがあるようですが、その『TVチャンピオン』を年末に一度復活させます。レギュラーまで行けるかわかりませんが、来年へ向けて頻度をあげていこうと思っています。『TVチャンピオン』は物事にたけている職人や、得意技を持っている人が登場して頂上決戦をするという番組で、動画としてインパクトがあるので、今のYouTube世代、今の時世にマッチしているんじゃないかと思っています」(同) そのほか将来を見据えて企画しているものにはどんなものがあるのだろうか。 「月曜深夜24時半から放送が始まった『バカリヅカ』は、バカリズムと東京03飯塚というベテランのコント師が登場する番組です。こんなふうにファンがついてくるような番組を今、重点的に増やそうとしています。 それと2024年度以降にテレビ東京の人気番組が一緒に協力して何かするような大型プロジェクト番組を年に1回やれないかと企画しています」(同) 配信やイベントなどと連動したコンテンツ展開をというのは、テレビ界全体が考えている方向だが、テレビ東京は制作局全体がそこに邁進する意向のようだ。