23時台アニメ枠新設など日本テレビのコンテンツ戦略
今年、開局70周年を迎えた日本テレビ。従来から進めてきたコンテンツ戦略をさらに強化し、10月改編では金曜23時台に新たなアニメ枠を設けた。チャレンジングな取り組みを続けている。(編集部)
金曜23時台に新たなアニメ枠「フラアニ」
2023年、開局70周年を迎えた日本テレビの10月改編で大きな話題と言えば、金曜23時台に新たなアニメ枠を設けたことだ。この10年ほど、各局ともアニメはゴールデン帯から撤退し、配信を前提にした深夜枠や土日のキッズ向けに分かれる流れが続いていたのだが、日本テレビは今回、新たな取り組みに踏み込んだことになる。背景には、日本のアニメが海外の配信市場で大きな注目を浴び、コンテンツとして期待が寄せられている現実がある。 「金曜23時台のアニメは『FRIDAY ANIME NIGHT』、通称『フラアニ』と呼んでいますが、これまでスタジオジブリの作品などを放送してきた『金曜ロードショー』の後に続く放送枠で親和性は高いと考えています」 そう語るのはコンテンツ戦略本部グローバルビジネス局担当局次長の佐藤貴博スタジオセンター長だ。このスタジオセンターは23年6月にアニメ・映画・ドラマなどストーリーコンテンツ製作陣を集結させてできた部門だ。しかもそれがグローバルビジネス局、つまり、海外市場を視野に入れたビジネス展開を推進する局の中核に置かれたことが、日本テレビの進もうとしている方向をうかがわせる。 佐藤さんは、これまで映画やアニメの製作に関わり、近年は配信やデジタル事業に関わってきた人だが、今回、スタジオセンター新設とともに、センター長に就任した。日本テレビはコンテンツ中心主義を掲げ、コンテンツをどう戦略的に展開していくかに注力してきたが、今回の組織改編でそれは新たな段階に至ったと言えるのかもしれない。海外市場への展開では、今はアニメの存在が大きいが、今後はドラマの海外展開も積極的に進めていくという。 「新設された『フラアニ』枠で10月にスタートしたのが人気アニメの『葬送のフリーレン』です。9月29日には『金曜ロードショー』の枠を使って初回2時間スペシャルでスタートするという試みを行いました。金曜ロードショーで今回のような形でアニメを流すのは初めてです。日本テレビとして勝負を懸けた取り組みでしたが、視聴率もアニメの評価も高く、大きな成功を収めています。 10月6日からは23時台の『フラアニ』枠でレギュラー全国放送していますが、アニメをテレビで見る面白さを改めて提案出来ているのではと思っています。この何年か、深夜枠を中心にアニメは配信が前提で、ユーザーにとってもテレビのプレゼンスは下がっていたと思います。今回の23時台全国放送は、もう一度、テレビでアニメを全国の多くのユーザーと同時に観て盛り上がるテレビならではの愉しさを訴えたかったので、まずは良いスタートが切れたと思っています。『フラアニ』の試みはアニメ界でも非常に注目されていて、何年か先までラインナップも決まりつつあります」(佐藤センター長) 日本テレビではこのフラアニ枠に加えて火曜深夜と土曜24時55分にアニメ枠があるが、土曜枠で放送している『薬屋のひとりごと』も人気を博している。 「『薬屋のひとりごと』も初回は90分スペシャルにして3話分を一挙放送しました。『葬送のフリーレン』とこの作品の2つは評価が高く、リーチした数の多さやその後の配信数も含めて、今期の全局のアニメの中で2トップをとる勢いです」(同) 『葬送のフリーレン』『薬屋のひとりごと』ともに製作幹事社は東宝で、日本テレビが幹事社ではない。いずれ企画製作幹事作品比率を上げていきたいという。 「TOHO animationは今年でちょうどブランド設立10周年を迎え、人気作品を多く手掛けています。日本テレビも以前はアニメ製作幹事が多かったのですが、近年は幹事作品が少なくなっています。今後は自社企画製作幹事作品も増やしたいと思っています」(同)