報道、アニメ、ドラマとTBSの様々な挑戦
この秋からニュース番組『news23』が大幅なリニューアル、また日曜夕方にアニメ枠を新設、さらに『日曜劇場』などドラマの展開と、TBSの様々な取り組みの狙いは何か。(編集部)
『news23』が大幅なリニューアル
TBSの夜のニュース番組『news23』が2023年秋から大幅なリニューアルを行った。月曜日から木曜日まではMCの小川彩佳さんは変わらないが、もうひとりニューヨーク支局にいた藤森祥平さんが加わった。スタジオのセットや番組の組み立ても変更された。どういう方針でリニューアルを行い、今後どういう方向に進もうとしているのか。報道局の黒岩亜純報道番組第2部長に話を聞いた。 「リニューアルは9月25日の放送からですが、準備は、前年から進めていました。基本的なコンセプトは筑紫哲也さんが話されていた“多事争論”。多様な意見を番組でも出していこうと考えています。というのは、今はスマホの時代。23時台は顕著にテレビ離れが起き、多くの人がスマホに流れているわけです。ではそのスマホで見ているものをテレビで再現できないか。“テレビのスマホ化”ですね。 例えば発生ものは、その時間までに皆さん、大体スマホで見てしまっています。それを前提にしないと番組を見てもらえない。そこでスマホで見られるように、皆さんが知っている問題について誰がどう言っているのか、様々な見方や視点を提示する。あるいはヤフーのコメント欄のように、他の人のオピニオンを見る。それをテレビでできないかと考えました。 実際にやったことは、まず1人ないし2人のゲストを必ず毎日配置すること。キャスターも意見を言っていこう、キャスターやゲストの意見が対立してもいいから言っていこうと考えました。 もうひとつ、私たちの強みは何だろうかと考えた時に、やはり一次情報をとってくるジャーナリストとしての機能です。しかもただ情報をとってくるだけでなく、問題提起をする、論争を呼んで、必要な時には警鐘も鳴らしていこう。そういうことができる記者をこの番組にどんどん登場させようと考えました。 実際にそのジャーナリスト候補を3人あげました。一人は“戦場記者”と言われる須賀川拓ですね。もう一人はNY支局に赴任経験があり、政治部出身、今は外務省担当の宮本晴代。彼女には政治・外交・日米関係などを担当してもらいます。3人目が片山薫。経済を強化しないといけないので経済の筆頭デスクだった彼に入ってもらいました。彼ら3人をロールモデルにしながら、JNN系列の地方局から来てもらったり、東京の記者が出ることもありますが、一次情報をとってきて問題提起ができる記者を加えました。 その枠組みは月曜から木曜ですが、金曜日は開始時間が23時58分と遅く、実際はCMが1分入るので23時59分スタートという『news23』と言えるぎりぎりの時間から始まります。金曜日担当は山本恵里伽さんと喜入友浩さん。局の中堅のキャスターたちが活躍できる場を作りました」(黒岩部長) ゲストは10人以上いるが、どの曜日が誰と決まっているわけではないという。 「大体決まっているのは月曜日は星浩さん、水曜日はトラウデン直美さんですね。それ以外の方は特に決まっておらず、当事者をゲストに呼ぶこともあります。例えば旧統一教会の二世信者をお呼びしたり、自衛隊で性被害にあった五ノ井里奈さんに出ていただいたりしました」(同) ニュースを掘り下げるというNEWS DIG(ニュースディグ)のコーナーを担当していた久保田智子さんは、以前は毎週だったが、今は取材に時間をかけ、2週に1回のペースで登場している。 そのほかリニューアルで導入したのは、「みんなの声」という、ユーザー参加型の機能で、その日のニュースについてアプリ上で自分の意見を選択式に回答すると、アンケート結果がリアルタイムで表示され、自分の立ち位置を知ることができるという仕組みだ。 「スマホを片手にテレビ視聴している人に、スマホを連動させて『皆さんどう思いますか』と意見を選択してもらい、多くの人がどういう意見なのか結果を見ながら、放送している内容にさらに関心を持ってもらう。世論調査というよりアンケートですね。 昨年、安倍元首相の国葬について、年齢が上がれば上がるほど反対の意見が増えていくという興味深いデータがありましたが、そんなふうに年齢別に多くの人がどう考えているのか見ることができるという仕組みです」(同) リニューアルの反響はどうなのか。 「落ち着いて見られる、明るくなったという声が多いですね。スタジオセットからCG、音楽などいろいろ計算しながら変えたのですが、多様な意見を知ることができるようになったという声もあります。昔、『異論反論オブジェクション』という街の声を紹介するコーナーがありましたが、ストレートニュースだけでなく、いろいろな意見を見られ、その中で自分がどの位置にあるのか確認できる、そういう番組にしていきたいと思います」(同) JNN系列局との関係を密にするという方針も強めているという。 「地域密着でじっくり取材する記者を登用していこうと考えています。海外支局との連携も強めたいですね。この番組が一次情報を集約する基地となっていく。問題提起を行って記者なりのオピニオンを伝えていく、そういう場になっていったらなあと思います。そうやって取材力を上げていくことで番組自体も強化していこうと考えています」(同)