12月のBS改編とNHKがめざす方向
12月1日をもってNHKがBS‒1とBSプレミアムをチャンネル統合するという大改編を行った。NHKプラスの配信と地上波の連動など、どういう戦略を考えているのか。(編集部)
BSの大規模なチャンネル統合
NHKの最近の話題といえば、12月1日をもって、これまでのBS-1とBSプレミアム(BS-P)がチャンネル統合されたことだ。BS-1はスポーツやニュース、BS-Pはドラマや歌、教養番組などを放送していたのだが、その2波がひとつになるという大きな改編だ。もうひとつBS-4Kという衛星波もありこれは変わらないのだが、NHKにとっては大きな出来事と言えるだろう。NHKは波を持ちすぎているという批判がこれまでも民放からなされてきたが、NHKとしてはNHKプラスという配信とともに、今後コンテンツをどういう形で視聴者に届けていくのか転機を迎えつつあるのかもしれない。 そのBS改定を担っているメディア戦略本部の斉藤潤エグゼクティブ・リードに話を聞いた。 「波が一つ減るという後ろ向きの捉え方でなく、2つの性質の違うものが一つになることで新しいものが生まれると私たちは考えています。例えばBS-1でスポーツを観ていた人もこれまでBS-Pで放送していたような番組に触れる機会が増えます。これまでBSは再放送が多かったのでそれを整理するなどして、コンテンツ自体が減るわけではないのですね。BS-Pは平日の午後は映画を放送しているのですが、高齢の方がビールを飲みながらゆったりとした時間をすごす贅沢な時間です。毎週金曜の午後は西部劇を放送しているのですが、これがかなりよく観られています。 そういう癒しのような役割、ライフスタイルに合わせた多様な選択肢を提示するという役割は、我々も意識しています。 またBS-1で今はMLB(メジャーリーグベースボール)を放送していますが、これは野球好きだけでなく全国民的なコンテンツになっています。 地上波で放送しているドラマなどを少し早い時間に放送しているのもBSの特徴で、例えば朝の連続テレビ小説を出勤のために見られない人はBSで先に観ることができます。地上波の人気のコンテンツを早く観たい、あるいはまとめて観たい、さらにはアーカイブスの役割も担っています。地上波のコンテンツをできるだけ多くの人に観てもらいたいという考え方だとすると、BSは深く刺さるコンテンツをお届けしたいと、そういう違いもあると思います」 とはいえ、テレビは視聴習慣に負うところも多く、BS統合によって放送時間が変わることの影響は少なくない。 「視聴習慣というのはとても大事で、それをいかに崩さないかが統合にあたって最大の眼目でした。とはいえ変わる部分もあるので、12月以降、平日の毎朝8時前の1分間、『きょうのBSは』というガイドの小番組を放送しています」(斉藤エグゼクティブ・リード) 人気コンテンツMLBについて言えば、BSで平日の午前を中心に放送しており、大谷選手の属するエンゼルスの試合はほぼ全て、そのほかダルビッシュ選手らの試合も中継している。 「MLBは全米で試合が行われるので開始時間がまちまちです。NHKの場合、ほぼBSで放送しています。今後、大谷選手がどのチームに行くかは、西海岸か東海岸かで放送時間が変わるので、大きな関心事です。いわゆる野球ファンだけでなく、大谷選手の登板を観るのが楽しみだという方はかなり多い。最重要コンテンツです。今年度はラグビーや日本シリーズも人気が高かったですね。 そのほかBSに関わるようになって私も驚いたのですが、花火大会が非常に人気があるのですね。恐らく直接観に行くのは体力的に大変だという高齢の方が多く観ているのかもしれません。長岡の花火大会が有名ですが、秋田の大曲の花火も人気があります。4月の桜や秋の紅葉中継、各地のお祭りもとにかく皆さん、喜んでくれますね。 今、テレビのコンテンツも観たいものしか観ないという傾向が強まっていますが、一方で、花火や祭りを観ていい時間を過ごしたいといったニーズも相当あります。ぜひBSでそういう楽しみ方をしてほしいと思います」(同)