猪子寿之が語る「崇高さ」とは何か? サウジアラビアに誕生した「チームラボボーダレス ジッダ」オープンを機にインタビュー
チームラボによる中東初の常設ミュージアムが誕生
アートコレクティブ・チームラボによる中東初の常設ミュージアム「チームラボボーダレス ジッダ」が2024年6月10日にオープンした。同館は延床面積が約1万㎡に及び、ユネスコ世界文化遺産に登録されているサウジアラビア・ジッダ歴史地区内に位置する。これまで世界各国で最先端のデジタルテクノロジーを用いて鑑賞者が没入し新たな知覚を体験できる作品を展開してきたチームラボ。 今回は6月初旬にチームラボボーダレス ジッダを訪ね、代表・猪子寿之にインタビュー。ジッダでの展示や、人間の認識へのアプローチなどについて聞いた。
猪子寿之インタビュー
――「チームラボボーダレス ジッダ」のオープン、おめでとうございます。 ありがとうございます。完成してよかったです。 ――中東初の常設ミュージアムですが、なぜこのジッダという場所を選ばれたのでしょうか? まずはサウジアラビア王国文化省からのオファーがきっかけです。この場所はジッダ歴史地区としてユネスコ世界文化遺産に指定されていますが、歴史的遺跡が残っており、なおかついまも生活が営まれている場所って世界でもそんなに多くないんです。初めてこの地に来たとき、サンゴ石でできた建物を初めて見て、とても印象的でした。 ――今年、麻布台ヒルズにも「チームラボボーダレス」がオープンしていますし、アジア圏では常設ミュージアムが設立され、人気を博してきました。中東のような異なる文化・環境の場所で大規模な常設展を行うことは、オファー後にすぐイメージできましたか? もともとチームラボの作品は何か特定の文脈に依存するものではないので、どこの場所はダメで、どこの場所はいい、というような環境による制限はありません。 ――訪れる人たちへこんな体験をしてほしい、といった思いはありますか? こんなに“デカい”ミュージアムはなかなか作れないと思います(笑)。東京よりもはるかに大きく、本当の意味で館内を彷徨える。そして彷徨いながら広がる世界と一体化するような体験をしてもらえたら嬉しい。また、世界遺産とそのなかに位置するこのミュージアムを行き来することで、何か連続的に流れる人類の知の連続性と時間を体験してもらえたらいいなと思います。 ――「Light Sculpture」は麻布台ヒルズでのボーダレスでも体験して驚きましたが、ジッダではより身近に迫ってくるような、背後からも包まれるような感覚がありました。同じ作品でも、この短期間でアップデートが加えられているそうですね。 「Light Sculpture」は空間としてよりパワフルになりました。照明の位置をより観客側にまで広げて置くことができたことや、音響のボリュームの違いもあります。 ――チームラボが、国家機関と共同でミュージアムを生み出す試みは今回初めてですよね。オファーに際して、サウジアラビアからは展示内容などについて具体的な要望はありましたか? オファーがあったのは約6年前の2018年、お台場のチームラボボーダレスができる少し前でした。それ以前にチームラボの展示を見て声をかけてくれたのだと思います。詳細な要望があったというより、まずはミュージアムを作ってほしいということでした。この建物も、チームラボが入る前提で建設されましたが、ここは歴史地区内のため、建築の外観は周辺と連続・調和させつつ、内側は我々の要望を伝えながら進めました。アルバイン・ラグーンに面していますが、海側から見るとこの建物はさらに壮観ですよ。