[特集/なでしこ、飛翔せよ! 03]独占インタビュー:田中美南 「自分には決めないといけない責任がある」
自分が決めればチームが救われる 責任を持って頑張りたい
─パリ五輪では初戦でいきなりスペインと対戦します。去年のW杯では4-0で勝利したものの、あの結果はあまり参考にならないのかなとも思っているのですが、どう考えていますか。 「あの試合はホントに参考にならないと思います。ボールを保持された印象が残っていて、打ったシュートがぜんぶ決まったからあの結果になっただけで、『あの試合があったから……』と考えている選手はいないと思います。それでもひとつ感じたのは、ポゼッションサッカーを目指すなか、カウンターからゴールすることができました。攻撃のバリエーションとして、ああいうカタチでも点を取れるという自信を得られました。ポゼッションを目指すのか、カウンターからゴールを狙うのか──。これからどういうカタチで初戦に臨むのかやっていくことになりますが、初戦に勝てたら大きいのでやっぱり勝ちたいですね」 ─仮に去年と同じような劣勢になるとして、1トップでの出場が濃厚な田中さんはどのような意識で臨もうと考えていますか。 「守備でまずは走らされると思うので、そういう展開になることを想像して身体を作っていきたいです。そうしたなかでも、マイボールになったらスペースに出ていく。去年の対戦で日本の選手ならCBと対峙したときに仕掛けられると実感したので、1対1になったらどんどん仕掛けていこうと思っています。いずれにせよ、さぼらない献身的な守備でまずは失点をしない。そこからチャンスになったら前に出ていく走力を身に付けて臨みたいと考えています」 ─グループリーグ2戦目のブラジルとは、昨年末からの短期間で3試合を戦っています。その3試合で田中さんはいずれも得点していますが、どのようなイメージを持っていますか。 「直近のブラジル戦(4月9日/△1-1)ではマンツーマンでハメてきました。自分がどこに下りても、CBが一枚付いてきました。このときの対応に関して、反省点が多いです。普段はちょっとした緩急で付いてくるCBが迷ってフリーでボールをもらえるシーンがあるのですが、ブラジルは割り切ってマンツーマンで来ててCBが迷う瞬間がなく、けっこう潰されてしまった。トラップしたあとに食われていたので、ワンタッチではがす質を高めたいなと思っています。ただ、マンツーマンで来てたので裏にスペースはあって、チームとしてそこはけっこう取れていました。あとはゴールですね。チャンスはけっこう作れていたけど決めることができていなかったので、自分が決めるイメージを持ってプレイし、ゴールにしっかりと結びつけないといけないです」 ─3戦目のナイジェリアに関しては、どのようなイメージがありますか。 「ナイジェリアだけではなく、コロンビアなんかもそうですが、高いポテンシャルを持つ選手たちが組織的になってきている。この変化はイヤだなと思っています。組織的に守っているところから、ちゃんと攻撃してゴールにつなげる。パスをつないでゴールにつなげることができてきている。フィジカルだけではなく、組織的なサッカーができているなと認識しています」 ─グループリーグを勝ち上がった先のことなのですが、東京五輪、W杯の8強を越えるためには、なでしこジャパンにはどんな力が必要になってくると考えていますか。 「決定力なのかなと思っています。ゴールするチャンスは作れると思います。あとは一発勝負の場で決めるか決めないかの戦いで、メンタル的な要素もからんできます。そうした決定力と、あとは粘りですね。ベスト4に行けるか行けないかは、そこの差で決まると思っています。FWの自分には決めないといけない責任があると思っています。後ろの選手が身体を張って守ってくれるぶん、決めるのは前の仕事です。どんなにビルドアップが良くても、最後に決まらないと結果(=勝利)につながらない。自分が決めればチームが救われる。そういう仕事なので、責任を持って頑張りたいなと思っています」 ─チームとしてメダル獲得を目指していると思います。目標を達成するために、ピッチ内外で必要になってくることを考えると、どのようなことが浮かびますか。 「ピッチ内では個々の選手がトップコンディションを維持し、チーム戦術のなかでしっかりと持っている能力を発揮することが大事です。ピッチ外では選手だけでなく大会に臨む全員でコミュニケーションを取り、一体となって戦うことですね。これに関しては、昨年のW杯でできていたので問題なくできると思っています。あとは運も必要になってくるので、引き寄せられたらいいですね」 ─五輪に臨むにあたり、楽しみにしていることはありますか。 「注目度の高い大きな舞台であり、このピッチに立てるのは幸せだなと思っています。W杯とは違っていろいろな種目の日本代表がいて、サッカーを知らない人、女子サッカーに興味がない人でも、勝ち上がることで応援してくれると思います。日本女子サッカーの未来のためにも、注目度が高いなか良い色のメダルを取りたいなと思っています。国を代表して戦ってくるので、サッカーに興味がない方でも応援してくれたら嬉しいです」 インタビュー・文/飯塚健司 ※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)第295号、7月15日配信の記事より転載
構成/ザ・ワールド編集部