鍵を握るのは“北極”!海洋問題のグローバルリーダーに聞く「海を守るために大事なコト」
井植 オーディエンスがたくさんいらっしゃったので、ちょっと盛り上げたかったんです。「みなさん、IUU ※ってご存じですか?」と聞いたとき、会場がシーンとなってしまって。6年以上前でしたから、まだ知らなかった人も多かったと思います。それで「I LOVE YOUだったらご存じですか?」と続けたら、みなさん「はーい!」と答えてくださったので、「角南さんは、IUUとI LOVE YOU両方の専門家なんです」と、ちょっと語呂合わせした感じで紹介させていただきました(笑)。 角南 おかげで、各国の総理夫人や大統領夫人の間で「I LOVE YOUの角南さん」というのがしばらく定着していましたよ(笑)。IUUに関しては、井植さんも日本の中心的な立場で取り組んでいらっしゃいますよね。 ※「違法・無報告・無規制」に行なわれている漁業のこと
世界中をつなぐ海に、ひとつのルールをどう適用するのか
井植 IUUは、海洋環境の中でとても大きな問題です。魚の乱獲、無報告(獲った魚を報告しないこと)などの違法漁業を取り締まらないと、私たちがどんなに海の生物資源を守っていこうと訴えても解決にならないし、未来につながっていきません。 角南 IUUは今いちばんの問題ですね。せっかく皆でルールを決めても、それが簡単に破られてしまうことが問題です。陸地の場合はいたるところに防犯カメラもついていますし、悪いことをすればすぐに捕まります。ところが海は地球上の面積の7割を占めていながら、防犯カメラが付いているわけではありません。違反を取り締まるにはいろいろ工夫をしなければいけないんです。 なお、PALM8の開催地だった福島は、原発処理水の海洋放出が課題です。中国は日本全体から、韓国は福島を含めた8県からの水産物の輸入を禁止しており、福島の漁業者は出荷制限や風評被害などの厳しい状況に置かれているのです。我々はPALM8の後も、福島や直近地震で被災した能登などの地域をはじめ全国の漁港や漁村を回り、地元の人たちと盛んに議論しながら活動を続けているんです。 井植 笹川平和財団としても、海洋問題にはかなり長い間、取り組んでいらっしゃいますよね。 角南 笹川平和財団と海洋政策研究財団が2015年に合併し、今にいたりますが、以前から海洋問題に取り組む唯一の民間財団として活動してきました。政策面から海洋問題を研究し、提言している世界でも非常に珍しい財団といえます。当然ながら日本だけで海洋問題を解決することはできません。世界中につながる海をまもるためには、世界の人々と一緒に取り組んでいかねばならないのです。