アストンマーティンの最新オープントップGT「DB12 ヴォランテ」に試乗! その知的で凶暴な二面性に心を奪われた。【試乗レビュー】
「GT」と「スポーツ+」とでは性格が一変
とりあえず幌を閉じたままスタートしてみると、8層構造の分厚い屋根はクーペ並みの静粛性を発揮。ただしこの日は気温20℃前後の曇天で、オープンカーにはぴったりの天候だったので、すぐにフルオープンに。そのまま首都高に乗って、ゆったりとした流れにDB12を放り込んでみた。 スタート・ストップボタンを兼ねたシルバーリングのドライブモードを「GT」にしておけば、エンジン特性は半分程度の出力に抑えられるため、マナーの良い走りに終始する。両側のウインドウを立てておけば風の巻き込みは皆無で、長い髪の女性でも、その乱れを気にすることはなさそうだ。 一方で、例えばお台場からレインボーブリッジにアクセスする上りの左カーブで「スポーツ+」を選んでやると、ステアリングの手応え、足回り、エンジンの吹け上がりがスポーツカーへと豹変。大きな体躯を忘れて矢のように加速し、路面を掴むが如くトレースするようになる。 エンジンは、まさにAMGのV8が奏でていたあの大迫力のサウンドだ。ただしシフトダウン時に発生する「パラパラッ」というブリッピング音が聞こえなくなったのは、現代の騒音規制に合わせたものなのかもしれない。 この差はまさに英国貴族が持つ二面性。思い出したのは、筆者が好きな大藪春彦の「汚れた英雄」で、美しい妻を主人公の北野晶夫に寝取られた英国貴族。彼が妻を取り戻すために普段の優雅で知的な仮面を脱ぎ捨て、サーベルを手に決闘を申し込むという凶暴さを発揮する場面だ。 機械としての高性能を突き詰めたドイツ車や、速さと官能性を突き詰めたイタリア車たちの特性とは異なる性格を持つ、イギリス車らしいDB12。3000万円オーバーのこのクルマを手に入れることができた暁には、ぜひその二面性を味わい尽くしたいものだ。 ■SPECIFICATIONS アストンマーティン DB12 ヴォランテ|Aston Martin DB12 Volante ボディサイズ:全長4725×全幅2135(ドアミラー含む)×全高1295mm ホイールベース:2805mm 車両重量:1898kg 駆動方式:FR エンジン:4.0リッターV8ツインターボ 最高出力:500kW(680PS)/5000rpm 最大トルク:800Nm/2750-6000rpm トランスミッション:8段AT 最高速度:325km/h 0-100km/h加速:3.7秒
文・写真= 原アキラ