アストンマーティンの最新オープントップGT「DB12 ヴォランテ」に試乗! その知的で凶暴な二面性に心を奪われた。【試乗レビュー】
ヴォランテを選んだ理由
試乗にあたってアストンマーティンから連絡があったのは、クーペモデルのDB12でも、オープントップモデルのDB12ヴォランテでも、どちらかお好きな方を選んで構いません、という贅沢な2択の提案だった。 そして筆者が選んだのはヴォランテ。“1日のうちに四季がある”というように目まぐるしく変わる英国のお天気の中で、ちょっとした晴れ間が現れるとオープンカーのルーフを開け、優雅にドライブする英国貴族の姿が目に浮かんだからだ。ちなみにヴォランテ(Volante)は「空を飛ぶ」という意味があって、あのDB5にもヴォランテバージョンがあった。また、有名なアルファロメオの「ディスコ・ヴォランテ」は、空飛ぶ円盤に形が似ていることからその名がついた。 撮影のために停めた外苑前の並木道(伐採でどう変わるのだろう……)に佇むシルバーボディのその姿は、とかく目につく空力付加物を一切受け付けていない。正面からでも、7:3(シチサン)と呼ばれる斜め前からでも、真横からでも、そして後方からでも、もう美しい、としか言いようがない。 パワーアップに合わせて、アストンマーティンを象徴する形状のフロント開口部の面積を一気に拡大したことで、顔つきだけは少しアグレッシブになっている。 そして、14秒で開く(時速50km/hまで、閉じるのは16秒)幌を上げると、さらに息を呑む。ダッシュボードをはじめ、美しいダイヤモンドキルティングが施された前席、小さな後席、その後方の幌の収納部に至るまでの全面が、ブラウンのセミアニリンレザーに覆われているからだ。たしかクーペのDB12はダッシュボード上面がブラックだったはずなので、圧倒されるという点ではヴォランテの方が上だ。 また、ドア内側にはアクセントとして、レザーよりちょっと濃いブラウンのウッドパネルを埋め込んでいる。その組み合わせのセンスの良さや、丁寧な仕上げの職人技ぶりに、またまた感心する。