第165回芥川賞受賞会見(全文)李琴峰さん「問題意識を小説の中に取り込む」
日本語の好きなところは
朝日新聞:朝日新聞の山崎です。おめでとうございます。李さん、幼いころに日本語に出合って、その魅力に引かれて、ある種、海を渡ったという感じだと思うんですけれど、その日本語の面白さというか、好きなところについてあらためてお願いします。 李:ありがとうございます。とあるエッセーで書いたんですけれども、日本語に出合って、まず子供のとき、日本語、どこで聞けるかというと、やっぱりアニメですね。日本のアニメが台湾で放送されて、たいていは中国語の吹き替えが付けられているんですけれども、言語を調整したりできて、それでたまに日本語で聞いたりするんですけれども、やっぱり音がきれいですね。たたたたたたたみたいな、そういう音韻的な感じがすごく耳になじむ。耳になじんで、それが好きだなと思って。聞くのも心地よいと。 そして自分が日本語を勉強し始めて思ったのが、漢字も使っているからまず親しみがある。そして、その漢字と平仮名のうまい交わり合い具合、なんかあんまり、ちょっと変な日本語ですけども。そういうところもきれいだなと思って。それで、主にこの2つですね。表記面と音韻面、この2つです。
それでもなお日本語で書くことの意味は
朝日新聞:小説を書くこと、日常生活において大変だとおっしゃっていましたけど、それでもなお日本語で書くっていうことはどのような意味がありますか。 李:書くですか。自分が今、日本に住んでいて、そして日本語で日々の生活をしているんですよ。だから日本語で書くのはある種、自然なことになっている、私にとっては。大変だけれどもね。自然なことになっている。だけれども例えばちょっと違う、例えばですよ、武侠小説を最近読んでいるんですけれども、武侠小説といえば古代の中国を舞台にして、いろんな人が殺し合ったりとか、そういう小説ですけれども、ああいう小説を書くにはやっぱり中国語がふさわしいと思う。 だから今は日本に住んでいて日本で生活している、そして日本を舞台とした作品を書いているんですけれども、基本的にね、関わり合い、関わりのある作品を書いているから日本語で表現するのが自然と。ただ、じゃあ日本語でしか書かないのかっていうとたぶん、将来の可能性についてはあんまり狭めたくないというふうに思います。 朝日新聞:先ほど日本のアニメのお話が出ましたけど、差し支えなければ、好きな作品とかあったら教えてください。 李:子供のときによく見ていたのは『名探偵コナン』とか『犬夜叉』とか『カードキャプターさくら』とかね。で、大人になってからやっぱりもっと深みがあるような、例えば『進撃の巨人』は結構好きだし、『魔法少女まどか☆マギカ』とか、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』とか、そういった作品です。 朝日新聞:ありがとうございました。 司会:ありがとうございました。すいません、もうお一方とさせていただきます。どうぞ。お願いいたします。