なぜ遠藤エミはボートレース最高峰SGで女子初Vの歴史的快挙を成し遂げることができたのか…新時代の到来と意識の変化
歴史の扉をこじ開けた。「第57回ボートレースクラシック」(SG)の優勝戦(3周、1800メートル)が21日、長崎県大村市のボートレース大村で行われ、1号艇からスタートした遠藤エミ(34、滋賀)がイン逃げと呼ばれる王道レースで涙の初優勝。女子レーサーとして史上初めて業界最高峰のSG制覇を成し遂げ、賞金3900万円を獲得した。払戻金は2連単(1)ー(4)710円、3連単(1)ー(4)ー(5)2920円だった(払戻金は主催者発行のものと照合して下さい)。なぜ遠藤は歴史的快挙を成し遂げることができたのか。
緊張で眠れなかった前夜
レースの前夜は緊張で眠れなかったという。 「普通にしようと思っても凄く緊張した。感じたことのない感情だった」 無理もない。年間9レースのみ開催され、競馬でいうG1に相当するSGレースの優勝戦に進んだ女子レーサーは過去に寺田千恵、横西奏恵の2人しかいない。2人は共に敗れ、その横西からは11年ぶり。遠藤に極度のプレッシャーがかかっていた。 しかも「ボートレースクラシック」は、1966年に旧名称は「鳳凰賞競走」としてスタートした伝統あるレース。SGレースのなかでも特に格式の高い「GRANDE5」のひとつで賞金3900万円は2番目の高額なのである。 スタートはコンマ7秒。悪くはなかったが、「ボートレースクラシック」の出場条件は「前年のSG、G1、G2戦の優勝者」または「G3以下の大会での優勝回数上位者」となっていて実力者揃い。2号艇の秦英悟(大阪)が前に出た。スリットで遠藤はやや出遅れる形になったのだ。だが、伸び返して1マークで真っ先にターンを決めると、みるみるリードを奪い、そこからは独走状態を築いた。 それでも「スタートは放りながらで2号艇の陰が見えましたが、しっかり回れて良かった。ただ、その後も体がうまく動かなくてハンドル操作とレバー操作がかみ合っていなかった」という。 降りしきる雨の長崎で先頭でゴールを切った。歴史的な快挙が達成された瞬間だった。 「勝ててうれしいです。レース前は普通にしようと思っても緊張して、これまで感じたことのない感情がわいた。スタートもターンも失敗したが、エンジンが連れて行ってくれました」 レース後は安堵と喜びが入り交じり感極まった様子。ひと言ひと言、かみしめるように話したが、その目にはじんわりと涙が浮かんだ。