4年後に持ち越された小林陵侑の”2冠”偉業の悲願はミラノ/コルティナ五輪で達成されるのか?
北京五輪のジャンプ男子個人ラージヒル決勝が12日、国家ジャンプセンターで行われ、ノーマルヒルで金メダルを獲得していた小林陵侑(25、土屋ホーム)が銀メダルを獲得した。2回の合計で勝敗が争われ、小林は1回目に最長不倒の142mを飛びトップで2回目に挑んだが、138mで、2回目に140mの大ジャンプを見せたマリウス・リンビク(23、ノルウェー)に、わずか3.3ポイント及ばず、悲願の金メダルはならなかった。それでも五輪でのジャンプ競技における一大会の複数のメダル獲得は1998年の長野五輪でラージヒル、団体金、ノーマルヒル銀の船木和喜氏以来の快挙となった。小林は、史上4人目の“2冠“を4年後のミラノ/コルティナ五輪で狙うことになる。
わずか1.83m差での銀メダル「さすがに緊張した」
氷点下8.4度の中国でハイレベルな戦いが繰り広げられていた。 メダリストが決まる2回目。小林の1人前で、今季W杯3勝をあげて勢いのある23歳のリンビクがヒルサイズに届く140mのビッグジャンプを見せたのだ。小林は「見ていなかったが歓声でわかった」という。 2回目を最終ジャンパーとして迎えた小林は究極のプレッシャーを受けた。優勝ラインとされるTO BEATは「140.5m」と掲示されていた。 140mに設定されたヒルサイズを越えなければ勝てない。 「さすがに緊張した」 当日の試技では、全体トップの136.5mを記録して、そのイメージのまま1回目に142mの最長不倒をマークしてトップに立っていた。小林のポテンシャルからすればクリアできる距離だったが、アプローチは肩に力が入り固くなった。夜半の寒さもあり、心なしか唇が青く見えた。踏み切りがやや遅れる。シューズ半分程度か。修正しようとスキーをあげていったが、空中で横後ろからの風にあおられ、スキーが少しローリングした。 「空中でバタついた」 着地点付近に風はなく、最後に伸びない。記録は138m。ポイントで3.3点届かなかった。距離に置き替えると、わずか1.83mの差だった。 「2本いいジャンプができた嬉しい気持ちと悔しい気持ち」 小林は、複雑な銀メダルの心境をそう明かした。 ラージヒルでは1964年以来の金メダルをノルウェーにもたらしたリンビクは「1本目にトップに立った小林が強いのはわかっていた。彼の2本目を見るのはとても緊張した」と喜びを爆発させていた。小林とリンビクはW杯でも顔を合わせば気楽に言葉を交わす気心の知れた仲。互いの素晴らしいライバル心が五輪史に残る死闘を実現させたのかもしれない。