パフェは、私にとってはアート。その場限りのはかなさもいいです。
宮田 ラウラさんみたいに感じてもらえると、やりがいがあります。 ラウラ パフェはいつも2種類ありますよね。旬のフルーツが使われているから来るたび楽しみなんです。果物以外に何を組み合わせるかって、どうやって考えていくんですか。 宮田 2つのうちのどちらかを月ごとに変えるようにしているんですね。今回はひとつは栗、もうひとつはりんごに決めました。そこから「このメイン食材に合う要素は何かな」と思いつく限りバーッと書き出すんです。 それをベースに、フルーツはフレッシュにするかコンポートにするか、カリカリの食感は何で出すか、ジュレの風味はどうするか、などを考えながら、構成を決めていくのが私のやりかたです。私は絵にしないと想像がつかないので必ずノートに簡単な構成図を描いて、味の奥行きやバランス、余韻までの味を想像しながら組み立てていきます。 ラウラ このノートもすごいですね(下写真)。真代さんの歴史が詰まっている。 宮田 ノートに全部描くは描くんですけれど、見返さないし、そもそも後で捨てちゃうんです。私がその場で作るのに必要だから絵にするけど、何ならノートじゃなくて裏紙でもいい。描いたら記憶から飛ばす。 ラウラ 過去のことを考えすぎてる人がすごく多いから、いいと思う。 宮田 私の中でパフェはアートという位置づけなんですね。一度、ある題材で作品を作ったらそれで満足というか、次は違うものに取りかかりたくなりますよね。 ラウラ ところで真代さんは、なぜパティシエになろうと思ったんですか。 宮田 私はもともと美容師になりたかったんですね。進学した高校が総合学科で、入学時に職業診断みたいなものがある。そのとき私の適職第1位がパティシエで、美容師は7位くらいだったかな。それでいちばん向いているのなら「目指そう」と決めました。 ラウラ それ、知らなかったかもしれない(笑)。でも面白い。
ディテールへのこだわりがパフェの魅力を後押し。
宮田 うちに来てみたいという人の中には「予約が難しい話題の店だから」という動機の人も少なくないんだけれど、私はやっぱり創り手なので、本質を見てくれる人のほうが好きなんです。 ラウラ フランス語の「パルフェ」から来ている「パフェ」だから海外にもあるんじゃないかと思っている人が多いんですけれど、ここまで繊細でこだわりが詰まったパフェが盛んな国は、日本以外にほとんどないです。こだわりというのも英語にない言葉で、私は日本文化の専門家ではないんですけれど、ディテールへのこだわりがすごいなといつも感動してしまいます。 宮田 そのせいか、うちは海外から訪れるお客さんもすごく多いです。 ラウラ 私がパフェを意識し始めたきっかけは早稲田大学時代なんですね。私は高校と大学、2回交換留学で日本に来ているんですが、早大生だったころはすごい円高だったのでとにかくお金がなくて。バイト先の先輩が「日本体験をしよう、美味しいものをご馳走するからね」と連れていってくれたのが日本橋の千疋屋。 私はフィンランド生まれで、デザイン大国でもあり、アイスの消費量が世界的に見ても多い国ですし、昔からどちらも大好きなんです。そこで食べたフルーツパフェに感激して、「パフェってアイスと建築が合わさったものみたい!」と思ったんですよね。そのあと、北海道大学大学院に進み、修士論文の息抜きによくパフェを食べました。 その後、東京で就職して、等々力の『パティスリィ アサコ イワヤナギ』か神楽坂の『アトリエコータ』か覚えてないんですけれど、どちらかで超芸術的なパフェを食べたのを機にどんどん沼に(笑)。