意外感のないFRB金利据え置き ドットチャートの形状には驚き 来年前半の利下げ予想は修正不可避か
米FRB(連邦準備制度理事会)による金利据え置きの決定は意外感のないものでしたが、驚きのポイントがあったと第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストは指摘します。藤代氏の解説です。 【写真】5月FOMCが「最後の利上げ」となるのか? 米国の経済指標を見てみると……
2024年末は5.25%に上方修正 利下げは2回分に縮小
9月FOMC(連邦公開市場委員会)は大方の市場関係者が予想していた通り金融政策の現状維持を決定し、FF金利(誘導目標レンジ上限値、以下全て同じ)は5.50%で据え置かれました。また声明文や記者会見も従来から大きな変化はなく、意外感のない結果でした。もっとも、3カ月に一度公表される経済、政策金利見通しは事前の予想対比でタカ派的(金融引き締めに積極的)な内容となり、金融市場は株価下落、金利上昇で反応しました。筆者も政策金利の見通しを示すドットチャートの形状には驚きを禁じ得ませんでした。 ドットチャートの中央値は2023年末が5.75%と前回から不変でした。追加利上げを支持した12人の参加者は、実際に利上げをするかは別として、インフレ再燃に備え、利上げの余地を残しておきたいと考えていたと思われます。反対に7人は現状水準での据え置きを支持しました。11月FOMCまでに蓄積されるデータが現在の基調とさほど変化しなければ、先の12人のうち数人が「据え置き派」に転向することで、全体として据え置き派が多数になると筆者はみています。直近の原油価格上昇は不確定要素そのものですが、極端な動き(例えばWTI原油100ドル突破)に発展しなければ、次回FOMCまでの約2カ月間、平均時給の増勢が鈍化する下でコア・インフレは緩やかに低下基調をたどると判断されます。
2024年末は5.25%に上方修正 利下げは2回分に縮小
今回驚きだったのは2024年末の数値です。6月FOMCの段階では4.75%、すなわち4回分(1回25bp:ベーシスポイント、1bp=0.01%)の利下げが想定されていましたが、今回は5.25%へと上方修正され、2回分の利下げとなりました。これはFRBが繰り返し主張してきた「高く・長く(higher for longer)」の姿勢そのものであり、来年前半の利下げを見込んでいた市場参加者(含む筆者)に予想の変更を迫る結果でした。 2025年は4.00%と2024年末対比で5回分の利下げが想定されましたが、それでも2.5%と推計されている中立金利(インフレを加速も低下もさせない金利水準)を明確に上回る引き締め領域であることに変わりはなく、2026年末ですら3.00%と中立金利に回帰しない形状となりました。この間、物価見通しは2023年が+3.3%、2024年が+2.5%、2025年が+2.2%、2026年が+2.0%とされ、2%に収束していく姿が示されました。またGDP成長率は2023年が+1.8%、2024年が+1.5%、2025~26年がともに+1.8%とされました。前回対比では、2023~24年の成長率見通しが大幅に引き上げられた点が目立ちました。