日経平均なぜ3万円超え? 4つの視点から株価急上昇の要因を考える
日経平均株価が1年8カ月ぶりに3万円台を回復しました。投資家、外部環境、国内経済という視点から株価急上昇の要因を考えます。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストの解説です。
●決算や株主還元策が投資家に好感
5月19日、日経平均株価は3万0808円で取引を終えました。ゴールデンウイーク明けのわずか2週間で一気に2000円近く上昇し、バブル崩壊後の最高値を約1年半ぶりに更新しました。 この株価上昇の背景には、2022年度決算及び株主還元策が投資家の期待を満たしたことがあります。東証が、PBR(株価純資産倍率)が1倍を割れている(≒会社が保有している純資産に対して株式の評価が低い)企業に対して、資本効率の改善を求めたことに企業が呼応し自社株買いや増配など株主還元策を強化したことで、投資家の日本株に対する評価が上がった形です。またそれとは別にここへ来て世界的に製造業の底打ち感が強まっていることも効いています。
●米国で製造業の経済指標に反転の兆し
米国経済は、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が行った金融引き締めの副反応によって、企業の資金繰り環境が悪化するといった不気味な材料が多くなっている反面、日本株との関係が深い製造業については、そのサイクルに反転の兆しが認められています。 代表的な企業景況感調査であるISM製造業景況指数は4月の値が47.1と低水準ですが、それでも3月からは0.8ポイント改善しており、また1~3カ月先の生産活動を読む上で有用な新規受注・在庫バランスに目を向けると、1月を底に反転基調が明確化しつつあります。これは新規受注が停滞する中でも在庫の圧縮が進んだことが背景で、先行きの生産活動が上向きやすい環境にあると言えるでしょう。
●台湾の電子部品生産も回復への期待
またIT関連財の生産集積地である台湾でも一部に上向きの動きがみられます。台湾の貿易統計によると、4月の輸出金額は前年比▲13.3%と依然大幅なマイナスですが、スマホやPC向けの需要が停滞する中でも中国経済の回復等を背景に1~3月期からは回復しています。また電子部品の生産統計で(企業が抱える)在庫の伸び率を確認すると、過剰な在庫はなお残存している模様ですが、それでも最悪期は脱しているように見え、先行きの生産活動が回復していく展開が期待できるようになってきました。今後中国経済が回復力を強めるなど追い風が吹けば、生産活動が底入れする可能性はより一層高まっていくでしょう。 このような外部環境の改善が進めば、日本株は電気機器セクター(半導体関連が多く含まれる)に牽引され、水準を切り上げていくと予想されます。