背景を探る…なぜ南野拓実のサウサンプトンへの”駆け込み移籍”が決まったのか?
その後にジョッタが負傷離脱しても南野の出場機会は増えず、攻撃陣のなかで今冬の移籍が取り沙汰されていたスイス代表ジェルダン・シャキリ、ベルギー代表ディポック・オリギらがむしろチャンスを得た。そしてジョッタの復帰が近づいてきたなかで、メイトランド=ナイルズを追いながら南野もチェックしていたと見られるサウサンプトンからのオファーが届いた。 コンスタントにピッチに立って日々の練習の成果を反映させ、試合で痛感させられた課題を練習のなかで克服していく。セレッソで、そしてザルツブルクで繰り返してきたルーティーンが、26歳になったばかりのいまこそ再び必要だと考えた南野には、移籍への迷いはなかったはずだ。 電撃的にまとまったクラブ間の契約交渉のなかで、サウサンプトン側は買い取りオプションの付与を希望したという。しかし、期限付き移籍を終えた後にサウサンプトンの判断で南野を完全移籍で獲得できる選択肢を、リバプールが断固として拒否したと英国内の複数のメディアが報じた。 リバプールが貫いた方針には、ユルゲン・クロップ監督の強い意向が反映されている。リバプールの地元紙『リバプール・エコー』は、日本時間4日未明のブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオン戦へ向けた記者会見のなかで、南野に対するクロップ監督のコメントを報じている。 「タクミを期限付き移籍させる上で理にかなったクラブが多くないなかで、サウサンプトンは違った。彼に欠けている唯一のことは継続して試合に出ることであり、このクラブではそれが難しかった。私たちはタクミのポテンシャルを目にしてきた。彼は新たな思考と自信を手にして戻ってくる」 プレミアリーグにおけるプレー時間が増える可能性があるからこそ、シーズン途中での南野の期限付き移籍を容認した。深い愛情が伝わってくる言葉に買い取りオプションを拒否した意向を重ね合わせれば、クロップ監督が南野の今後に抱いている期待の大きさが伝わってくる。 サウサンプトンから熱望された移籍とはいえ、もちろん無条件でポジションや先発の座が待っているわけではない。新天地での競争を勝ち抜いた上でピッチに立ち、自他ともに認める「結果」の積み重ねを手土産にリバプールへ復帰するために。早ければ日本時間7日未明に待つニューカッスル・ユナイテッド戦から、サッカー人生のターニングポイントと言っていい、南野の新たな戦いが幕を開ける。 (文責・藤江直人/スポーツライター)