背景を探る…なぜ南野拓実のサウサンプトンへの”駆け込み移籍”が決まったのか?
左右のサイドアタッカーを含めた攻撃陣に故障者も多く、日本時間の先月31日に行われたアストン・ヴィラ戦では、右サイドの主力セオ・ウォルコットが負傷離脱。昨シーズンにリーグ2位の22ゴールをあげたエース、FWダニー・イングスも20試合終了時で7ゴールにとどまっている。 長丁場のリーグ戦で苦境に陥ったサウサンプトンの弱点を埋め、活性化につながる選手間の競争をもたらしてくれると期待しているからだろう。中盤の攻撃的なポジションだけでなく2トップの一角でもプレーできる南野へ、ハーゼンヒュットル監督はこんなエールも送っている。 「優れた攻撃のオプションを提供することで、タクミは私たちを手助けしてくれるはずだ。シーズンの重要な時期にチームへ深みをもたらしてくれる彼と、ピッチ上で仕事ができるのを楽しみにしている」 もっとも、どんなに熱いラブコールを送られても、最終的には南野自身が決断を下さなければ移籍は成立しない。移籍期限最終日に届いた突然のオファーにほぼ即決の形で応えた背景には、ヨーロッパを代表するビッグクラブ、リバプールの一員として南野が抱き続けてきた思いがあった。 「正直、いまの自分の立場といったものに、まったく満足していません」 危機感が込められた言葉を残したのは、日本代表のオランダ遠征に招集された昨年10月だった。新型コロナウイルス禍で1年近い空白期間が生じた間に、ザルツブルクからリバプールへと羽ばたいた。しかし、新天地で得られた自信を問われた南野は、やや困惑した表情を浮かべている。 「移籍してから高いレベルの選手たちと練習から一緒にプレーしていますけど、試合で結果を出してこそ成長を実感できるので。レベルアップしているのか、と言われると現時点ではわかりません」 ブラジル代表ロベルト・フィルミーノ、セネガル代表サディオ・マネ、エジプト代表モハメド・サラーで構成される、ヨーロッパでも屈指の攻撃陣は南野にとって高く、険しい壁であり続けた。さらに今シーズンは、開幕直後に加入したポルトガル代表ディオゴ・ジョッタが一気に序列を上げた。 リバプールでリーグ戦になかなか絡めない状況のままで再び招集された、同11月の日本代表のオーストリア遠征で残した言葉には、悲壮感にも近い思いが見え隠れしていた。 「僕としてはこっち(日本代表)でもチームでも確約されたポジションはないと、結果を残していかなければ居場所はないと思っているので」