ラグビー「リーグワン」が開幕!”府中ダービー”は東京サントリーサンゴリアスが勝利…変化を選手や指導者はどう感じたのか?
激戦を制したサンゴリアスでは、現役ニュージーランド代表の大物が注目された。 ゴールキック時の微笑みで話題のフルバック、ダミアン・マッケンジーだ。複数の防御を引きつけながらのパスも絶妙。両翼の同僚を快適そうに走らせる。合流から約1か月の本人は、「まだ周りとアジャストする必要がある」と述べた。 「日本は、自分がプレーしてきたスーパーラグビー(南半球トップレベルの舞台)よりもペースが速く、ボールを持ってから(判断を下すまで)の時間が無くなっていることも多い。予想していた範疇のスピード感でしたが、自分がそれにアジャストしなければならないと感じました。もともとテンポの速い試合は好きなので、どんどん学んでうまくプレーしたい」 リーグワンでは、トップリーグ時代から外国人枠の仕組みで変更があった。より多くの海外出身者が活躍できそうで、試合の質を高める役割が期待される。とはいえサンゴリアスの先発スクラムハーフで、日本代表の流大はかように話す。 「サントリーの強みは日本人が育っていること。色んなスーパースターが来ていますが、あくまで日本人選手が底上げをする。日本のリーグ。日本人が頑張る。それが、僕の思っていることです」 確かにサンゴリアスでは、早大卒の新人である下川甲嗣がフランカーで先発。リーチを1対1で仕留めるタックル、持ち前のランを披露した。 下川にとって早大の1年先輩で、昨年代表入りした齋藤直人は、後半18分にスクラムハーフとして入るや味方の援護からのトライ、自陣から奥のスペースを切り裂くキックで魅した。 36ー34とわずかなリードで迎えた後半20分頃、33歳の小澤直輝が際立った。 ハーフライン付近でサンゴリアスのタックルで相手を押し返し、起立してさらにボールの出所に圧をかけ、味方のジャッカルに伴いブレイブルーパスの反則を誘った。 プロ選手の割合がどんどん増しそうなリーグワンにあって、小澤は営業車でグラウンド入りする社員選手の1人。希少性が増しそうな存在は殊勝に述べた。 「社員選手でも意識をプロフェッショナルに保ってプレーする。それで会社の元気印になれたらいいと思います」 独立した法人クラブと企業クラブが混在するリーグワンは、独自路線で海外のプロリーグに比肩するレベルに達したいという理念を持つ。 現場の指導者は、リーグワンの戦いをどう感じたのか。お互いにミス、反則を重ねてフラストレーションもたまった80分を受け、ブレイブルーパスのヘッドコーチで元ニュージーランド代表のトッド・ブラックアダーはこう話した。 「マッケンジー選手を含め、他国の選手が活躍しているのはご存知の通りです。トータルで10トライ以上が生まれたという意味では、アタックの面ではよかったのかなと。このリーグは競争率が高くなると思います。点差の近いゲームがあるほど、強度、遂行力が上がってくると思います」 一方のサンゴリアスの軸たる中村は、皮膚感覚に基づいて言う。 「自分達のチームだけで言うと、スーパーラグビーをはじめどこのリーグに属したとしてもスピード感はある。ただ、フィジカルのところはリーグワンのなかでも(さらに向上して)トップにいなくてはいけない。まだまだ伸びしろがあると思います」 新型コロナの第6波が襲来し、各チームが厳格な対策を余儀なくされる厳しい状況下、リーグワンは第一歩を踏み出した。閉塞感から抜け出せぬ社会に、ラグビーという名の希望を伝える。 (文責・向風見也/ラグビーライター)