なぜラグビー日本代表はW杯日本大会では勝利したスコットランドに20-29で惜敗したのか?
ラグビー日本代表は20日、敵地エディンバラのマレーフィールドでスコットランド代表に20ー29で惜敗。欧州ツアーの最終戦は勝利で飾れなかった。 試合直後、日本代表の主将で、オープンサイドフランカーのピーター・ラブスカフニがグラウンド上で、こう語った。 「どちらにも転ぶ展開。これがラグビーというものでした」 2019年のラグビーワールドカップ日本大会・グループリーグ最終戦では、このカードを28ー21で制している。あれから2年。スコットランド代表は、この秋、日本代表が勝てなかったオーストラリア代表を下すなど世界ランクでは日本代表を3つ上回る7位の力を示していた。苦戦も予想された日本代表だが、約6万人の観衆をざわつかせた。
「強気でいこうと思っていた」
多彩な攻めで活路を見出した。スコットランド代表のボールキープ力を警戒し、簡単にボールを渡さない戦法を採用。エリアを問わず手数を打った。 接点の後ろからフォワードの選手が駆け上がり、その後方のランナーが突破口を切り開く。攻防の境界線に駆け込む動きを重ね、相手タックラーを接点に巻き込み反則を誘う。ブレンダン・ピッケリー・レフリーが防御側に辛い判定を下す傾向があったこともあり、日本代表の反則数は「9」と相手の「11」を下回った。日本代表はこれまで反則禍に苦しんでいたが、ボール保持の作戦を採ることでその課題を克服した。 スタンドオフの松田力也は、試合をこう振り返った。 「スペースがあるのは見えていたし、自分たちがアタックをすれば相手は嫌がっていた。大きな選手が(膝に)手をついていたのが見えていた。強気で行こうとは思っていました」
ディフェンスも光った。インサイドセンターの中村亮土や、このツアーから主将を外れたフランカーのリーチ・マイケルのタックルが鋭く刺さった。後半からアウトサイドセンターで登場のディラン・ライリーも、よくスペースを埋めた。 ピンチを防いでスコアをもぎ取ったのは、14点差を追う後半19分以降のことだ。 自陣22メートルエリアで防戦一方となった日本代表は、相手の落球でスクラムを得るとロングキックで陣地を挽回。ハーフライン付近で防御網を張ると、スコットランド代表がスローフォワードの反則(前方へのパス)を犯した。 日本代表は、再びスクラムを獲得する。 ここから複数のパスを経由して球を受けたのは、副将の中村。一転、敵陣22メートルエリア右奥へ蹴り込む。 現在のルールではハーフラインより後ろでの攻めからのキックは、敵陣22メートルラインを越えると自軍ボールラインアウトに繋がる。 一気にチャンスを得た日本代表は、24分、敵陣ゴール前右でのラインアウトからトライを決める。 途中からナンバーエイトに入ったテビタ・タタフが、持ち前の突進力で相手フランカーのハミッシュ・ワトソンを蹴散らしゴールラインを割ったのだ。ここで17ー26と迫り、32分のペナルティゴールで20ー26と迫った。 1トライ1ゴールでひっくり返せる点差で、クライマックスを迎えた。 しかし、この後にミスが出た。 34分頃、自陣からの連続攻撃が未遂に終わって相手ボールスクラムでプレーが再開。直後の守りで大きな突破を許すと、スコットランド代表にペナルティゴールを与えて9点差とされてしまった。 振り返れば日本代表は、ずっとミスに泣いていた。松田のゴールキック失敗で計5点を取り損ね、相手センターのクリス・ハリスのタックルに阻まれパスを繋げられなかった。前半終了間際に3トライ目を許した場面では、防御のマークを乱した。 さらに12ー19のスコアで迎えた後半15分には、自陣でドライビングモールを押されてトライを奪われ12ー26と点差を広げられていた。対するスコットランド代表は要所を押さえていた。 松田はこう悔やんだ。 「勝ち切るところでの規律、ミスで相手にチャンスを与えていた」