老舗タンナーが皮革のふるさと姫路で作る、こだわりの革:株式会社山陽
「TAANNERR」を通して革の魅力を伝え、地域貢献を
ー自社ブランド「TAANNERR」を立ち上げた経緯を教えてください。 戸田: 「革製品が作られる背景も含めて、もっと革の魅力を知っていただきたいなと思ったことが立ち上げのきっかけです。 昔に比べると、現在は革製品に触れる機会が減ってきているんじゃないかと思っています。新しい素材が出たり、置き換わったりもしていますから。 昔は今ほど素材が多くなかったので、必然的に革が使われてきたという背景もあるかもしれません。 ただ、食肉用として加工する過程で出た皮を捨てるのではなく、それを生かして革製品が作られてきたことはあまり知られていないなと。 近年は、SDGsや環境・エコへの取り組みが注目されています。私たちタンナーからすると、革製品はまさにSDGsの面も含めて魅力ある素材だと考えています。 弊社のようなタンナーはBtoBの素材メーカーで、消費者と直接関わる機会がありませんでした。革製品の製造背景や魅力を消費者に伝えるために、まずは直接お話しする機会のひとつになればと自社ブランドを立ち上げました」 ー「TAANNERR」では、どのような革が使用されていますか。 戸田: 「本ヌメ革の最高峰『ピットヌメ・タァンネリル』、美しさを守れる安心の防水革『防水・タァンネリル』を使っています。タンナーが出しているブランドなので、革の品質には自信があります。 アイテムに合わせた革を自社で作っていますし、『TAANNERR』に関わっているスタッフも革好きの社員ばかり。革へのこだわりが100%詰まったブランドです」 ーお客様の反応はいかがですか。 戸田: 「百貨店のポップアップストアでは、私自身も売り場に立つんですが、“すごくきれいな革だね”とお客様からよく言われます。 革らしい革は取り扱いが難しく、ブランドが大きくなればなるほど製造しやすい革を使うようになってしまうんです。そのため、弊社の製品を見ると、新鮮に見えるんだと思います。 一般の方はいい革に触れる機会が減っているとも言われているので、ぜひ実際に触れてみてほしいです。 先日、若い学生の方がふらっとポップアップストアに立ち寄ってくださったのですが、革の説明をしたらとても興味を持ってくれ、値段だけを見ると決して安くはないのですが、お財布を購入してくださいました。 若い方はあまり高価なものを買わないと思っていたのですが、価値を分かってもらえると、購入していただけるんだなと。売り場に立つ中で、新しく気付くこともたくさんありました」 森本: 「今の若い方は、私たちの若い頃とは感覚が違い、リセールバリューをきちんと考えてものを買う方が多いと聞きます。だからこそ、ものの価値を見極めているのかもしれません」 戸田: 「TAANNERRのビジネスバッグは、ブランドを立ち上げてから私もほぼ毎日使っているのですが、百貨店の方に見てもらったときに“新品かと思いました”と言われるほど、くたっと感がなく味が出ています。 本当にしっかりした革は、長く使っていただけて、味も出てくるものです。なので、買うときには“値段が高いな”と思うかもしれませんが、何年も使えるものだと考えると安いんです。そこは共感いただける方が多いですね。 SDGsでもロングユースは謳われているので、商品を短期間で何回も買い換えるよりも、いいものを長く使う感覚が広がっていくといいなと思っています。 売り場でお会いするお客様は、弊社のことを知った上で商品を購入すると、とてもいい笑顔で帰られます。うれしそうに帰られるお客様を見ると、人や社会にとって価値あるものを提供していかないといけないなと思いますし、共感を得られる素材を作りたくなります。 多くの方に知っていただくことが、私たちにとっても必要なことなんだなと。自社ブランドを運営することは、とても意義のあることだと実感しています」