老舗タンナーが皮革のふるさと姫路で作る、こだわりの革:株式会社山陽
革に対する誤解を解き、正しい知識を伝えたい
ー御社はLWG(Leather Working Group)環境認証を取得されていますね。どのような認証なのか、教えてください。 戸田: 「LWGは2005年にイギリスで創立された組織の名前です。その組織が、“世界的に環境にいい革を作りましょう”と認証を行うようになりました。 認証規格には、タンナー・貿易業者・下請業者・委託加工業者の4つのカテゴリーがあり、それぞれ審査項目が異なります。たとえば、タンナーとしての審査項目は、排水処理の方法、材料のトレーサビリティ、化学物質の適切な管理方法、禁止薬物の使用の有無などです」 塩田: 「LWGでは独自の環境監査基準に照らして認証を行っています。認証を得るまでは、工場内の作業者の安全性や排水の成分チェックの方法など、そういったデータを集めるのが非常に大変です。 ただ、私たちは排水処理も含めて自社内で行っているので、そういった意味ではコントロールしやすかったんです。 これからは、環境対応をしていない会社は取り残されてしまいますから、こうした取り組みにも力を入れています」 ー消費者へのアピールポイントにもなりそうですね。 森本: 「PR活動は行っているのですが、鞄や靴などの商品タグに認証マークをつけるのは難しくて。理由は、その鞄を販売している企業さんがメンバーシップになっていない認証を取得していない場合はつけられない、という運用ルールがあるのです。 しかし、メンバーシップになられている大手企業ではLWGを取得した企業としか取り引きしないというところもあります。世界的にも環境への取り組みを見る目は厳しくなってきています。 弊社としては、展示会でポップを出すなど、できるだけみなさんの目に触れるように活動を続けています」 ー御社が考える革の業界の課題は、何かありますか? 戸田: 「弊社もそうですし、業界の課題でもあるのですが、ここ数年はSNSが発達していろいろな情報が世の中に溢れています。 その中で、革に関する誤解や間違った情報も拡散されていて、その発信を見た方が信じてしまい、さらに拡散するという悪循環も生まれているなと感じています。 誤解を解き、しっかりと正しい情報を知っていただくために、日本皮革産業連合会では『Thinking Leather Action(シンキングレザーアクション/以下、TLA)』という情報発信のプロジェクトを立ち上げられています」 ー誤解されている情報には、どのようなものがありますか? 戸田: 「日本皮革産業連合会のアンケート調査では、革が副産物であるということを認識している方は39%ほどでした。つまり、半数以上の方が、“革は食肉牛の皮から作られている”とは認識されていないようなのです。 みなさんお肉を食べられますよね。食用のお肉をとった後には皮は絶対に出てきます。それを使わないで破棄するのにもエネルギーや費用がかかります。使わないのはもったいないことなんです。 最近、革製品が使われなくなった要因のひとつに、間違った認識があると思います。革を使うことが環境によくないことだ、倫理的にもよくないことだという誤解を解くのが、まさにTLAが取り組まれている活動です。 さらに一方向からの間違った情報を、影響力のある方が発信してしまうと、一気にその情報が広がってしまいます。そういった断片的な情報で誤解してほしくありません」 森本: 「弊社が行っているワークショップや工場見学は、私たちのことを知ってもらうPRの側面もありますが、革業界への誤解を解いて、理解を深めてもらいたいという想いも込められています」