老舗タンナーが皮革のふるさと姫路で作る、こだわりの革:株式会社山陽
ー植物タンニン鞣しとクロム鞣しでは、出来上がる革に違いがありますか? 塩田: 「皮はアクションを加えてれば加えるほど繊維がほぐれて柔らかくなります。逆にアクションを加えないピット槽で鞣した革は分厚くて伸びにくい、しっかりとした革になります。 昔は乗馬の手綱や鞍(くら)として使われていましたが、現在はベルトや鞄の持ち手に使われることが多いです。 一方で、クロム鞣しで作った革は耐熱性に優れ、厚みの調整などにも対応できるのが特徴です。弊社では、クロム鞣しをした革は靴用として使われることが多いので、型崩れしにくいような革を作るようにしています。 何を作るのかによって、それぞれ鞣し方を変えています」 ー白鞣しは伝統的な製法だとお話しいただきましたが、具体的にはどのような方法なのでしょうか。 塩田: 「白鞣しにも、いろいろな作り方があります。平安時代に行われていた本来の方法は、市川という川に皮を浸けて、バクテリアにさらして塩となたね油で揉みながら鞣す、というやり方です。 原皮はもともと白色で、特に色はついていません。塩となたね油は風合いをつけるために使っているだけなので、それ以外のもの使わなければ皮の白さがそのまま残るんです。 この製法は一旦途切れてしまったと聞いていましたが、この地域で再現されているという方もいらっしゃいます。やはり希少なものであり、文化財という側面もあるようです。 弊社では、特殊な鞣し剤を用いて独自の白革を作っています」 ー鞣しの工程で、難しい工程はありますか? 塩田: 「“革は同じように作っても同じようなものができない。しっかり見て皮の個性に合った調整をしないから同じものができないんだ”と、昔からよく言われてきました。 そのため、植物タンニン鞣しでは、ピット槽に浸けてから出来上がるまでの間に、皮を少しカットしてどこまで浸透しているかを適宜チェックしています。 弊社には24槽のピット槽があり、各槽の中でタンニンの濃度を調整しています」 ー皮の仕入れから革が出来上がるまで、自社で一貫して行うよさを教えてください。 塩田: 「弊社が取り引きしているお客様は、物理的な強度に対して厳しい方が多いです。 お客様が何を作られるのかで革の仕上げ方や塗装方法は変わりますが、最初から仕上げまで一貫して行っているからこそコントロールしやすく、そこが弊社の強みになっています」