「橋」の地図記号、現在では2種類だけ。上が高速道路、下が鉄道の<瀬戸大橋>は地図でどう表現されている?
◆現在の犬山橋 鉄道と道路の併用橋といえば同じ橋桁を同一平面で共用するのが従来は一般的で、愛知・岐阜県境に架かる犬山橋が代表的であった。 両県と名古屋鉄道が建設費を分担して大正末に竣工した併用橋で、平成12年(2000)までは電車と自動車が同一の路上を仲良く(かどうかは知らないが)走っていた。 現在は下流側に道路専用橋が完成、別々になっている。 地形図の表記では路面電車が通る橋と同様で珍しくはなかったものの、路面電車よりはるかに大きい車両の4両編成が自動車に囲まれてゆっくり通過するのはなかなかの奇観であった。
◆陸地測量部員の意気込み 併用橋といえば長野県の千曲(ちくま)川を渡る村山橋も平成20年(2008)まで同様で、こちらは単線の線路と道路が柵で仕切られていた。 戦前の地形図ではこれが見事に表現されていた。 道路と線路の間に「柵」の記号を入れ、全体を橋記号で束ねた表現から、この特徴ある橋を既存の記号の組み合わせでなんとか表現しようとする陸地測量部員の意気込みが感じられる。 ※本稿は、『地図記号のひみつ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
今尾恵介