「橋」の地図記号、現在では2種類だけ。上が高速道路、下が鉄道の<瀬戸大橋>は地図でどう表現されている?
地図を読む上で欠かせない、「地図記号」。2019年には「自然災害伝承碑」の記号が追加されるなど、社会の変化に応じて増減しているようです。半世紀をかけて古今東西の地図や時刻表、旅行ガイドブックなどを集めてきた「地図バカ」こと地図研究家の今尾恵介さんいわく、「地図というものは端的に表現するなら『この世を記号化したもの』だ」とのこと。今尾さんいわく、「現在の橋記号は2本線の橋と1本線の橋の2種類しかない」そうで――。 【図】「鉄道・道路橋」と注記があるドイツのモーゼル川に架かる併用橋 * * * * * * * ◆瀬戸大橋は地図でどう表現された? 現在の橋記号は2本線の橋と1本線の橋の2種類しかない。バリエーションがなくていささか寂しいが、橋そのものは新しく長大なものが各地に架けられ、トラス橋や斜張橋、アーチ橋などさまざまな形式が妍(けん)を競っている。 最初に記号を作ったときには想定しなかったであろう構造の橋も登場した。 担当者がさぞ困っただろうと思われるのが瀬戸大橋である。これは周知の通り上下二層構造になっており、上が高速道路で下が鉄道だ。 橋の形式は吊り橋やトラス橋などいくつかあるが、もちろん図から区別はつかない。 結局ここで描かれた記号は上を通る「中央分離帯のある道路」の橋だけで、鉄道はとりあえず無視された格好だ。
◆ドイツの地図記号は親切 東独の記号では鉄道と道路が上下で併用する橋(どちらが上かの識別あり)も独自に定められていたので、これを借りてきて表示してほしいくらいだ。 ちなみにドイツのモーゼル川に架かる鉄道と道路の併用橋は地形図に「鉄道・道路橋」と注記があるので親切だ。こちらの橋は瀬戸大橋と反対で、線路が上である。 現状では道路の下になって描かれないJR線だが、橋の傍らに添えられた「瀬戸中央自動車道・本四備讃線(瀬戸大橋線)」の文字にかろうじて登場はしている。 もう1つ図から実態がつかみにくいのが静岡県河津町(伊豆半島)にある河津七滝(ななだる)ループ橋。 この橋は同じ場所で2回転しているので真上から見た状態の地形図には一重しか描かれていないのが残念だ。 周囲のスペースには余裕があるのだから、「二重ループ」とでも補足してくれないだろうか。